第7話 公衆トイレ
俺は女の子が出て来るまでしばらく待った。
全然出て来ない。
女子トイレの中に声を掛ける。
「着れた?」
返事がない。
「お~い。いないの?」
何度も声を掛けたが、返事がない・・・。
女子トイレに入っていったら、覗きだと思われてしまう・・・。
親でもないんだから、入って行くのをためらってしまった。
誰か女の人が来ないかな・・・そしたら、中を見てもらえないか頼んでみよう。
でも、しばらく待っても誰も来なかった。
もしかしたら、中で猥褻犯につかまっているかもしれない。
俺は急を要すと思って、わざと大きな声で「入るよ!」と言って女子トイレに入っていった。
「おーい」
中には個室が3個しなくて、どれも人がいなかった。一番奥に俺があげた紙袋が置かれていた。俺は彼女がそれを置いて行ってしまったことがショックだった。やりすぎだったんだろう・・・もしかしたら、お母さんに怒られるかもしれないし、結果として失礼なことをしてしまったのかもしれない。
俺はベンチに戻ってしばらく彼女を待ったけど、夕方までいても戻って来なかった。
翌日も弁当を持って行ったけど、もう彼女は来なかった。
俺は気になって毎週土日一ヶ月ほどその公園に通った。
人気のない公園で半日ベンチに座っていると、近所の人から怪しまれたようで、通報した人がいたみたいだ。警官が話しかけて来た。俺と同じ位の年齢で、どうでもいいけどイケメンだった。
「こんにちは。防犯警戒で見回ってるんですけど、○○警察の者です。休憩ですか?」
「いえ・・・実は・・・」
俺は聞かれてもいないのに、警官にここで会った女の子のことを話し始めた。
すると、その人は俺が頭のおかしい変態だと思ったようだった。
「家はこの辺ですか?」
「いいえ。駅だと△▼です」
「遠いですね」
警官はますます怪しい男だと思ったようだった。
「マラソンのトレーニングしてるんで。結構長距離を走るんです」
「へえ。すごいですね。往復で30キロくらいありますよね」
「はい。でも、走ってるとすぐですよ。今度、〇〇マラソンに出ようかと思ってて」
警官は本物のランナーだと思ったようで、態度が柔らかくなったから俺も安心した。
「身分証お持ちですか?」
「いえ。ジョギングしてたんで財布持ってなくて・・・」
「じゃあ、住所と氏名と連絡先を伺えますか?」
「はい」
俺は正直に答えた。
それで、しつこく女の子のことが心配だと訴えた。
児童相談所じゃないんだから、そんなこと言われても困るだろうと頭の中では思ったけど、他に方法がない。
でも、その人は結構いい人だった。
「僕も気になるんで、この公園に時々来てみます・・・でも、虐待とかじゃないと何もできないんですけどね」
「できれば、何かしてあげられないかなと思って」
「もし、見つけたら児童相談所に相談します」
「あ、ありがとうございます。もし、その子が見つかったら連絡もらうことってできませんか。すごく心配で。最近、毎週来てるんです」
「わかりました。いいですよ」
警官は爽やかに言った。
歯並びのいい歯。
女だったら好きになってしまいそうだった。
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