第6話 ギフト

 その後、俺はショッピングセンターに行って、女の子のパンツを何枚かと季節に合った洋服を買った。4000円以上したけど、別にいいんだ。親が洗ってくれないなら、俺が毎週新品を買ってあげようと思ったから。


 レジの人は俺が小学生の子のお父さんだと思っただろう。

 ちょっと恥ずかしかった。


 俺は、その後の1週間、女の子から電話がかかって来るかとハラハラしてたけど、来なかった。


 俺は紙袋を持って、翌週土曜日の午後にその公園に行った。

 もしかしたら飯も食ってないかもしれないから、食べ物も持って行った。


 すると、しばらくしてこの間の女の子がこの間と同じ服装でやって来た。


「昼食った?」

「食べてない」

「一緒に食べない?」

「うん」


 俺は自分で作って来たお弁当を広げた。

 デザートにゼリーとかも持って行った。それに、いろんなお菓子も。

 女の子はお腹が空いているみたいで、ものすごい勢いでガツガツ食べていた。


「食事とかどうしてるの?」

「学校の給食、あとはコンビニのパンとか。お母さんが買って来てくれる」

 その子は言った。

 買って来てくれるんじゃなくて、それしか与えてないんだろう。

 俺は気の毒になった。

「今日は何も食べてないの?」

「うん」

「お母さんは?」

「帰って来なかった」

「そうか・・・」

 男の家にでもいるんだろうか・・・。どうしようもない女だと呆れる。

 俺にしてやれることは?


「俺、毎週来てもいいよ。そしたら一緒に遊ぼう」

「うん」

 俺たちは、飯を食った後、また四葉のクローバーを探した。

 

「この間のクローバーどうした?」

 俺は探しながら話しかけた。

「おうちにあるよ。ママにあげた」

「そう。喜んだんじゃない?」

「う~ん。いらないって」

「そう?俺だったら欲しいけどなぁ。あれから、何かいいことあった?」

「う~ん。ない」

 女の子は考えていたけど、そう答えた。

「そっか。俺は仕事でいいことがあったよ。だから、君もいいことあるよ」

 俺はその子の家庭のこととかを色々聞き出した。

 親が離婚していること。

 学校に行くといじめられること。

 お風呂には1週間に1回しか入っていなくて、親が洗濯もしてくれないこと。

「お母さんうつ病なの。でも、お仕事頑張ってるの」

 女の子は母親を庇った。

 俺はそのお母さんに会ってみようかと思った。

 それで、俺で力になれることはないかと聞いてみよう。

 断られるかもしれないけど、上手く話せば何とかなるかもしれない・・・。

 そしたら、女の子を週末預かって、お風呂に入れたり洋服を買ってあげたりできる。


「実はね・・・洋服プレゼントしようと思って持って来たんだ」

 と、紙袋を渡した。

「洋服とパンツが入ってる。あと靴下。似合うかなと思って」

 女の子は紙袋から洋服を取り出した。

「かわいい!」

「学校に着て行って。今度、もっと持って来るから」

「ありがとう。着替えて来る」


 女の子は俺が何も言わないうちに、トイレにダッシュした。トイレは50メートルくらい先にあったと思う。俺は2人で食い散らかした弁当を片付けた。食べきれなかった分は持って帰ってもらおう。そしたら、夕飯になるだろう。


 俺はその子が小学生のうちは土日毎週会って話し相手になってあげようと思った。

 中学生になったら、彼女もきっとヤンキーになって居場所ができるだろう。

 そしたら、俺はもう援助をやめよう。 


 

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