ある日、家のインターホンが鳴らされた。ロイドが出ようとするが、丁度手が空いていたので私が出るよと言って通話画面の前に立った。

「はい、どちら様でしょうか」

『警察の者だ。ミラ・アンダルスはいるか』

 ───警察? なぜ警察が私に?

「……私、ですが」

『玄関まで来い』

「……分かりました」

 なんだろうか。身に覚えがなさすぎる。訝しみながらとりあえず玄関まで行き、ゆっくり息を吐いてドアを開ける。

「はい」

「……お前がミラ・アンダルスか」

「そうです」

「特殊機械禁止条例に違反したとしてお前を逮捕する」

「えっ、ちょっと待ってください。なんですかその条例」

「なんだ、知らないのか? 近頃各地でロボットや人工知能がバグを起こして暴走化することが起きているんだ。持ち主が負傷するなんて事例もある。果たしてそれがどういう原因なのかは分かってないんだが、今後そういうことを減らすためにロボットを異常に持つ者を取り締まることになった」

「……でも私の家の子たちは」

「皆口を揃えてそう言うさ。そして俺の返答も決まってる。『じゃあそれは証明できることなのか?』」

「………」

 たしかにそう言われてしまえば終わりだ。どうしようか。

「……まあいい、知らなかったんなら仕方ねえな。猶予を3日やる。3日後また来るから、それまでにお縄にかかる覚悟をするか、ロボットたちを壊すか決めておけ」


 世界で起きているバグ。たしかに私の家でも時折動きが悪くなる子や充電が残っているのにピタリと動きを止める子がいたが、もしかしたらそれの影響だったのかもしれない。頭が痛くなる。家にいる子たちが一斉にそのバグにやられたら、家はめちゃくちゃになるだろうし私だけじゃ止められない。

「……ミラ」

「ああ、ロイド……私どうしよう」

「さっきのお客さんは、誰だったのですか」

「……警察」

「“けいさつ”というのは、なんですか?」

「えっと……悪いことをした人を捕まえたり、町の平和を守ったりする人たちだよ」

「そんな“けいさつ”がミラになんの用だったのですか」

「……ロボットをたくさん持っているのが、悪いことなんだって」

「……? 理解できません。なぜそうなるのですか」

 私だって理解できない。うちの子たちはインターネットの回線には繋がっておらず、完全に孤立したプログラムのみで動いている。どこにバグが入り込む隙間があるというのだろう。

「私もよく分かんないよ……」

「ミラ、僕はどうすればいいですか」

「……」

 私はどうすればいいのだろうか。

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Man of machine 水神鈴衣菜 @riina

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