#28「伝達」
「まずは、そうだな。魔法の原理について教えてやろう」
ユファは手頃な枝を拾い上げると、地面に人型の絵を描き始める。
「今、お前の頭には『マナ』や『魔力』と呼ばれる魔法の素を創る器官が出来ている。こいつのお陰でお前は人ならざる力、魔法が使えるわけだ。そしてマナを生み出すことができるのはヒューロ、お前だけだ」
人型の頭の部分を枝でつつき、ユファは話を続ける。
「しかし、お前の中に貯めておく量には限界がある。だから必要以上にマナを使い過ぎると、生産が追い付かなくなり、マナ切れになる。そうなると、あとは分かるな?」
「うん」
「そこでだ、俺はとある方法を考えた」
「おお!」
悩みの種であった魔法の連続使用に改善の余地が見える、そう思ったヒューロは目をキラキラと輝かせた。
「それは・・・・・・」
「それは?」
「あとで教える。まずは座学だ」
まさかのもったいぶりにヒューロは「ありゃ」と口から零し、体勢を崩す。
「そして、これは重要なことだが、お前によって放出されたマナ、魔力はこの世のありとあらゆるものに浸透する。そしてマナが浸透したものは魔法的な性質を得ることもあるんだ。例えば先の戦い、黒獅子の一人と相対したとき、魔法が効かなかったことがあっただろう。あれは剣が部屋に散ったマナに浸食され、使用者の精神力と相まってお前の魔法を弾いからだ。マナには思いを汲み取る力があるからな」
ここまで説明をしてくれたユファにヒューロは疑問を覚える。
「え?なんで俺たちが戦ったこと知ってるの?」
「・・・・・・俺にはお前のことは何でも知っている」
曖昧な答えにヒューロはその子首を傾げる。しかし、それ以上彼の口から答えが出ることはなかったのであった。
「まあいい、次に杖について説明する」
「杖?」
「ああ。魔法使いと杖は切っても切り離せない関係だ。よくおとぎ話に出て来る魔法使いも杖を使っているだろう?何故だか分かるか?」
ユファの問いにヒューロは首を横に振る。
「いいか?魔法は杖などを媒介させると、その素材にもよるがマナの消費が抑えられたり、その効果を増幅させたりすることができる。あとは、対象を簡単に選択することができる。つまり杖などは魔法の補助をしてくれるというわけだ」
「杖って何でもいいの?」
「その素材にもよるな。例えば、木は比較的魔力を通しやすい。そして木の種類でその通りやすさも変わってくる。他には鉱石や生き物の体の一部も様々な効果を発揮する」
「へえ」
「それから――」
こうしてユファの講義はしばらくの間続いた。その話を聞いてヒューロは魔法に関する様々な知恵を得ることができたのであった。
「よし、座学はこれまででいいだろう。次は実践的な修行だ。お前はまだまだ魔力の使い方、管理がなっていないからな」
そう言うとユファは手に持っていた枝をヒューロに渡した。
「魔法を使うには、精神力、集中力、想像力、が必要だ。それらをこれから鍛える」
ヒューロがそれを受け取ると、ユファは地面を指差して言った。
「これから毎日、休憩時間にここにきて魔法を使って石を積み上げろ。そしてその日積み上げた石を木に変身させるんだ。枝の隅々までちゃんと想像してな。それが自分の背丈を越えるようになったら次のステップだ」
「はい!」
ヒューロは早速近くにあった拳大の石に枝を向け、「動け」と唱える。しかし石は重く、中々動く気配を見せない。そこでヒューロはもっと力を込めて「動け!」と唱えた。すると今度は、石がふわりと宙に浮いたかと思うと、そのまままっすぐ遥か上空まで吹っ飛んでいった。
「ほらな言った通りだ。まだまだ魔力の使い方がなっていない。いいか、杖の先まで神経を集中させるんだ。指の延長線のように。そうするとほら」
そう言うと、ユファはヒューロから枝を受け取る。そしてヒューロの眼前に杖を突きつけると、そこに丁度落ちてきた石がピタリと空中で停止した。そしてそれを上下左右に揺らして見せるユファは、そのままヒューロの足元にゆっくりと石を落とした。
「お前も練習すればこれぐらいできるようになる」
そう言ったユファはそのままヒューロの元を立ち去り、モーリスの方へと歩いて行った。
「あれ?そういえば何でユファさんって魔法使えるんだろう?」
ヒューロに微かな疑問を残して。
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