#19「VSジョナサン&シーナ その1」
ヤンをなんとか逃がし、二人の騎士と相対するヒューロとモーリス。ヒューロには女騎士、モーリスには男騎士が相手に就くことになった。
「ジョナサン、どうする?」
女騎士はヒューロと斬り合いをしながらジョナサンに問いかける。
「まあいいこのガキ共を葬ってからゆっくり追うとしよう・・・。そっちはお前に任せたぞシーナ」
モーリスの相手をしながらジョナサンと呼ばれた男は答える。
「あんまり舐めないでもらえるか・・・な!」
モーリスが大きく剣を横薙ぎに振る。しかし、ブンという風切り音が鳴っただけで、ジョナサンには当たらなかった。軽やかにバク転をし回避したジョナサンは、そのまま闇に姿を眩ます。
「また消えやがって・・・。卑怯だなてめえら」
「フフッ、何とでも言うがいい。これが我らの戦い方だ。貴様は負けた後にあの世でも同じことを言っていればいい・・・」
横目でそれを確認したシーナは、ヒューロから距離を取り同じく闇に姿を眩ます。
「クッ、コイツもか!」
ヒューロとモーリスは互いに距離を詰め背中合わせに並んだ。そして恐らく奇襲を仕掛けて来るであろう敵に対し剣を構える。
「この闇の中じゃあいつらがどっから襲ってくるか分からねえ」
「そうだね・・・。あ、そうか!なら・・・」
ヒューロは何やら思いついたようで、構えを解く。それを尻目に確認したモーリスは、警戒態勢のまま問いかける。
「何かあるのか、打開策が・・・」
「あるよ!暗いからダメなんだ。じゃあ明るくすればいい!“光よ”!」
ヒューロが空中を指差して唱えると、彼の指先から光の玉が現れた。その玉は眩い光を放ち、広間全体を煌々と照らした。
すると、部屋の隅にいたジョナサンとシーナの姿が露わになる。
「キャッ」
「うおッなんだこの光は!」
思わず目を覆いたくなるようなその光量に怯み、その場にいる全員は動けずにいた。
「でかしたヒューロ!」
隙を見つけたモーリスは、今だ動けずにいるジョナサンに向かって突撃を始めた。受け身でしかいられないジョナサンはモーリスの剣戟を受けるしかなかった。
なんとかモーリスの剣を受け止めたジョナサン。再びモーリスとの鍔迫り合いとなり、困惑して叫ぶ。
「一体何なんだこれは!?」
「お前、魔法ってもんを信じるか?」
ギリギリと金属音を鳴らしながらモーリスは挑発気味に問いかける。
「魔法だと?馬鹿馬鹿しい!」
「じゃあ、その馬鹿馬鹿しいもんに踊らされるんだな!」
モーリスがそう言って力を込めると、ジョナサンはそれをいなす。すると剣が弾かれ二人は距離を取る形となった。
一方ヒューロもモーリスに続きシーナに攻撃を仕掛けていた。
「あなた変なことができるようね」
シーナは攻撃をいなしながらヒューロに話しかける。それでもヒューロは剣戟を繰り返す。
「あら、お喋りは嫌いだったかしら」
「うるさい!」
ヒューロはそう叫ぶと思いっきり剣を振り回す。それに合わせてシーナは身を引いて躱した。
二人は一定の距離を保ち、円を描くように間を取り始める。
「なんであの子を誘拐しようとした?」
「教えたら私たちの好きにさせてくれるの?」
「させない!“止まれ”!」
ヒューロはそう唱える。そしてシーナへと再び攻撃を仕掛ける。しかし、その攻撃は簡単に彼女の剣に弾かれてしまうのだった。
「え・・・?どうして?」
「あら、今のは何?」
攻撃を弾かれたヒューロは、その数瞬の間に思考を巡らせる。
(なんで動ける?なんで・・・。この疲労感、魔法はちゃんと発動してるはずなのに!)
勢いあまってそのまま後ろにのけぞってしまったヒューロは何とか態勢を立て直す。そして、ヒューロの体を確かな疲労感が襲う。
(ま、マズイ・・・)
疲労から膝を着いたヒューロの隙を、シーナが見逃すはずもなかった。すぐさま彼女の凶刃がヒューロを襲う。
ヒューロは何とか体を捩り攻撃を回避しようとする。しかし完全に躱すことはできず、ヒューロの右横腹に刃がサクリと入っていく。
「ぐぅッ!」
苦しみのあまり何とも言えない声を口から零すヒューロ。そんな彼を見てシーナはすかさず攻撃を繰り出す。それを今度はなんとか躱すことに成功した。
「うっ・・・」
しかし動いた反動もあり、傷口がすぐさま悲鳴を上げた。ズクズクと鋭い痛みがヒューロを襲う。たまらず彼はその勢いのまま床に転がった。
(魔法が効かない、剣術も恐らく相手が上・・・。一体どうしたら)
悩むも痛みとシーナは止まらない。すかさず追撃を与えにやって来る。
(魔法が効かないなら・・・)
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