#7「親子」

 あれから数日が経った。ヒューロは自らの力について数々の実験を繰り返し、分かった点が幾つかあった。それは以下の通りである。


・力を一定量使うと、脱力感を感じ動けなくなること。また、回復にはそれなりの時間を要すること。

・無から何かを動かすことは出来ず、今あるものをどうにかすることしかできないこと。

・念じる事でも力を使うことができるが、消費量が激しいのと、効果発動までに時間がかかってしまう。しかし、対象や効果を声に出したり、文字に書き起こして発動すると、効果が表れるのが早く、力の消費量も比較的少ないということ。


 これらを数日かけて発見したヒューロは自室からようやく出てきた。その間部屋から一歩も出ずに集中して作業していたヒューロに、父ヴァルハットは心配の眼差しを向ける。

「何日もぶっ通しで作業してたみたいだが、大丈夫か?」

「うん大丈夫」

 ニコッと軽く笑い、すぐにまた何か考え事をしている表情に戻るヒューロ。その様子を見たヴァルハットははあ、とため息を吐いた。

「お前、集中力があるのはいいことだが、あんまり詰め過ぎるのは良くないぞ。人生あんまり考えない方がよくいったりするもんだ」

 ヴァルハットは作業の傍らそう呟いた。ヒューロは俯きがちだった顔を上げ、もう一度笑みを零した。

「父さんもたまにはいいこと言うね」

「うるせえ」

 ヴァルハットがそう吐き捨てると、二人は共に笑い出した。

「でも、母さんのことはもっと考えた方が良いと思うよ」

 ヒューロは思い出したようにそう投げかける。

「あいつは自分の意志で出ていったんだ。それにあいつもお前に似て一つのことに集中すると周りが見えなくなるタイプだからな。俺が何か言ったところで帰って来るとは思えん」

 そう吐き出したヴァルハットにヒューロは「そっか」とだけ溢した。

「とにかく、あいつが満足するまでこっちからは何もしない。お前も余計なこと考えてないで店の手伝いをしろ。ほれコイツをフォンス爺さんに届けてこい」

 ヴァルハットはそう言うとヒューロに小包を手渡す。ヒューロはその包みを受け取ると、急いで店の出口へ向かった。

「その前に水浴びしていけ。匂うぞ」

 ヴァルハットはからかうように鼻をつまみながら言った。「はーい」とヒューロは返事をすると、包みを置き、水浴びに向かうのであった。

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