第8話風にのって・・・

ぼくにだきついてきたワタコさん。その姿を最後に、ワタコさんはぼくの前からいなくなってしまった。

「また、ワタコさんに会いたいな・・・」

どうしてもワタコさんに会いたい・・・、でも住んでいる場所がわからない・・・。

たしか菜花園とか言っていた・・・、家のパソコンで検索してみると、以外にも近所にあることがわかった。

「ここなら、行けるかも!」

そう思ったぼくは、菜花園の場所をメモに書いて、すぐに自転車に乗って菜花園へ向かった。

家から自転車で三十分、菜花園についた。

そこは幼稚園みたいな建物だけど、小さい子どもから、同い年・年上の子もいた。

ぼくが門の前にいると、あの時ワタコさんを連れ去った男の人が現れた。

「あれ?あんたは帰農の・・・」

「あの、ワタコさんはどこですか?ぼく、ワタコさんに会いにきたんです!」

すると男の人はさみしそうな顔で言った。

「お前、ワタコさんのこと好きだったんだろ?そうでなきゃ、あの時守ったりしないもんな。だけどワタコさんはもうここにはいない、新しい家族のところへ行ったよ。」

「新しい家族・・・?」

「ワタコさん、身寄りがいない子どもなんだよ。だけど三日前に引き取り手が決まって、もうそこへ行ったよ。」

ワタコさんに親がいないなんて、ぼくは知らなかった。

「あー、そういえばワタコさんから手紙を預かっていたんだ。住所わからなくて困っていたけど、手間がはぶけてよかったよ。」

そう言って男は一枚の紙切れをぼくに渡した、そこにはこう書いてあった。



『今までありがとう、私は風に乗って行きます。いつまでも忘れないでください。』



短い文章にぼくは泣いた・・・。

そしてぼくの秘密の恋は、風にのって飛んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

タンポポの綿毛 読天文之 @AMAGATA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ