第6話ワタコさんの逃亡

突然、ワタコさんにうでをつかまれたぼくは、公園を抜けて住宅街へとやってきた。

「どうしたのワタコさん?」

「突然、ごめんね・・・。あたし、菜花園を出ていったところなの」

「えっ!?どうして?」

「あたし・・・、遠くへ行くことになったの。そうなったら、もう会えなくなってしまうから、きみと一緒にいたいの。」

遠くへ行くって、どういうことだ?

ぼくはそう思いながらも、一緒にいたいと言ってくれたワタコさんに、少しでもそばにいてあげたいという気持ちになった。

「わかったよ、今日はぼくがついてるから安心して。」

「ありがとう・・・」

うれしい顔をするワタコさんに、ぼくもうれしくなった。

「あ、そうだ。今日は誕生日だったね、はいどうぞ。」

ぼくは小袋をワタコさんに渡した。

「これ、バースデープレゼント?」

「うん、スーパーの雑貨屋でみつけたんだ、開けてもいいよ。」

そしてワタコさんは小袋を開けた、そこにはぼくが選んだ花柄のハンカチが入っていた。

「かわいい・・・、ありがとう」

ワタコさんはハンカチをほっぺたにつけた。

その時のワタコさんは今までの中で、一番かわいくなった。

それからぼくとワタコさんは、行く当ての無い道を歩き始めた。

でもお互いに一緒にいることができて、幸せだった。

けど・・・、この時間はもうすぐ終わってしまう。

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