忠臣集う簒奪者
忠臣集う簒奪者1
十歩もの距離を一足に飛び越える強靭な脚力を更に強化魔術で押し上げた
音が散りやすく相手が飛び道具を自由に使える屋外での戦闘に実は若干苦手意識のある
「おらおら! 命が惜しいやつは退きやがれえ!」
目の前で何人もの同僚がなすすべなく一方的に薙ぎ倒されていく様を見て、それでもなお心折れずに立ち向かえる者などそうはいない。
そんな調子で既に十数人をその手にかけた
行く先に立ちはだかる人影はみっつ。どのような状況でも心折れての敗走など許されない自尊心と忠誠心に支えられた義務感の権化、職業騎士。
「三対一か。はっ! 昔を思い出すぜ」
向こうは鎧も盾も完備で全員剣を抜いて前ふたり、後ろひとりの陣形を取った。
衛兵たちは三人の職業騎士の後ろで固唾を飲んで見守っている。
絶望的だがここで時間を掛けるわけにはいかない。引くなんてもってのほかだ。
「お困りのようですね
そのとき背後から誰よりも良く知る気配が現れた。
「おせえぞ
「ははは、なんといっても
「でも今回は
「まあギリだな」
「それは重畳」
職業騎士三人が前に出るのと
衝撃の嵐を突き抜けたとき、死角となっていた頭上を飛び越えた
前のふたりは、しかし後詰めのひとりを犠牲にしてでも
「丸腰の僕を倒せばその
当然その意図は
ニタリと口元をいやらしく歪ませて左手の指先で宙をなぞると小さな障壁を斜めに作り出してその剣を左側へと往なした。ふたりの職業騎士が同時に目を見張る。
魔術士とは集団戦において支援や大規模攻撃を行う者であって、魔術による近接戦をこなす者がいるというのは完全に盲点だったのだ。
ひとりめは存在しないはずの盾に剣を逸らされてたたらを踏み、待ち構えていたふたりめと
これではふたりめが十分な踏み込みを行えない。
どうする?
剣を振り上げたまま迷った彼はその刹那の隙に背中から刃を突き込まれた。
根元近くまで深々と刺した剣を迷わず手放した
一瞬で白目を剥いて意識を失い、床に伏すのを待ちもせずにもう一本の剣で延髄を貫かれて絶命する。
しかしまだ終わっていない。最初にかかとを受けて倒れた後詰めの職業騎士が起き上がり迫って来ているはず。
「おや……起きませんね」
鼻をひくつかせて状況を察した
「もう死んでる」
うつ伏せに倒れたままの首元から鮮血が広がり始めていた。念のため
その傷を見て
「なるほど、これは心強い」
「そうだな……あとでまたお小言がありそうだがよお」
「ああ、それは……そうですね。いやはや……」
ふたりはぶつぶつと言い合いながらその場を離れて城の上階、執務室へと急いだ。
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