誇りに驕る騎士2
衛兵たちは一様に柄の短く刃幅の広い、斬る動作にも対応した槍を携え
しかし寸前に展開された
こうなると身構えていた差が出る。
さらにその手から落ちた槍の一本を拾うとまだ立っているふたりへ横薙ぎに一閃。返す刃でイーヴァンへ斬り付け弾かれ、ここで初めて数歩下がった。
「はっはっは、なるほど虚を突くだけなら騎士にも劣らんな!」
イーヴァンの傲慢な態度にふたりは並び立ちそれぞれ舌打ちする。
「言われてますよ
「お前もだろうが
態度は気に入らないが
賞金稼ぎや冒険者を名乗る者らは腕前もピンキリだが、職業騎士の肩書きだけは違う。
騎士の家に生まれた子どものみが厳しい訓練と幾度もの試験を潜り抜け、苦難の末騎士団に入ってまだやっとスタート地点。そこまできてようやく騎士として生きることを許されるという、選ばれた家系に生まれた自負とそれを背負う覚悟の塊のような自我がなければ選ばない過酷な仕事。むしろ生き様と呼んでもいい。
だから“弱い職業騎士”なんてものは万が一にも存在しない。
彼らは例外なく個人戦闘、部隊指揮、騎乗、野営などの技能と知識に優れた闘争と戦争の専門家たちなのだ。
「こいつは……抜くしかなさそうだな」
「ここで時間をかけたくありませんし……仕方がないですね」
「奥の手があるならすべて出し切ってこい、あとでつまらん泣き言は聞きたくないからな。準備に時間がかかるならいくらでも待ってやるぞ? はっはっは!」
「ふむ、それではお言葉に甘えまして」
「久しぶりに……利き腕を使わせていただきましょうか」
差し出された右腕の先に魔力が注入され、まるで肉が湧き出たかのように袖の内側が膨れ上がっていく。それはイーヴァンが呆気に取られている僅かのあいだに左腕と同等の長さまで育ち、袖の先から薄ら輝く手のひらのような気配が現れた。
「な、なんだ、それは……」
イーヴァンが震える声で問う。
「幻肢痛、というものをご存知ですか?」
「う、失った手足がかゆみや痛みを持つという、あれのことか?」
「はい、それのことです」
さらに全身の動きを試すように身を翻し足を捌きながら
「僕も腕を失って長く幻肢痛に悩まされました。いえ、それ自体は今もあるのですがね? ……これはその痛みを鍵に失われた腕の像を精密に意識下へ描き、存在しない右腕へ向けて複数の強化魔術を重ね掛けしたものです。強化魔術で
大仰に語っている
「盾はお借りしますね。死体にはもう必要ないものでしょうから」
その隙に
僅かな時間のみ使用可能な
「それでは、ふたりとも準備できましたので始めましょうか」
「お望み通りの全力だ。あとでつまらん泣き言を言うなよ?」
それは対照的な構えだったが、職業騎士イーヴァンは即座に理解した。
こいつらは、この佇まいは、ただの野盗や兵士あがりではない。
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