善を振るう商人3
乱闘が始まった。
大きく跳躍した
「やれやれ、まったく騒がしいですね」
しかし
「それで、どうなさるんです?」
引きつった顔で目の前の混沌を凝視していた商人が
もうめちゃくちゃだ。こいつらだってそうだ。こんな馬鹿げた取引、なにを真に受けることがあるんだ?
「はは、は。考えてみりゃ人間を買うの買わねえのとマトモに取り合うほうがどうかしてんだよな」
「ははは、これは奇遇ですね。正直なところを申し上げると僕もそう思います」
しれっと口にした
「どうすっかはお前をブチのめしてガキ共を助けてから考えらあ!」
「あ、はい」
そしてあっけに取られている商人の顔を、滑り止めのついた頑丈な靴に全体重を乗せて勢いよく踏みつける。
「僕、こんな身なりなんでよく誤解されるんですけど
ぐりぐりと踏み躙ってから足をどけると、商人は踏みつけの一撃で既に意識を失っていた。
「おやおや、これでは取引を続けられませんねえ」
苦笑して乱闘へ視線を向けると、そちらへ悠々歩を進める。
「さて、たまには
商品扱いしていた子どもたちのことなどまるで目に入らないように通り過ぎていった
「それじゃ私もちょっと首突っ込んでくるから、あとはよろしくね♪」
縄に繋がれているのは少年とその弟妹の三人で、しかしその先を握っているのもまた少年だ。三人はなにが起きたのかわからない顔で
「え、あ、あの……」
「あんたが命を懸けて守るんでしょ? だったら自分の命も一蓮托生よ。放しちゃだめだからね」
「えっと……はい」
けれども彼らはわざわざ目立つように市場を連れ歩き、絡んできた商人を嘲笑うように煽り、挙句に乱闘騒ぎを優先して自分たちを放り出すというのだ。
取り残された少年たちは顔を見合わせ、そして覚悟を決めた。
乱闘は既に相手を選ばず誰も彼もが手当たり次第という境地に達していた。
しかしここは下流街も外縁に近い市場だ、まともな警備などくるはずもない。
多くの者が倒れ、あるいは力尽きてへたり込み騒ぎも概ね収まった頃にようやく彼らはやってきた。
その誰もが武器を携え、剣呑な空気を湛えて周囲を見回しながら三人に近付いてくる。
“自警団”。
名ばかりは立派な彼らはしかしまともな職に就くこともなく汗水たらして働きもしない。ただ代価を取って暴力を請け負うだけの連中だ。
要するに他人に
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