第23話

 腹をアームに掴まれた。

「くそっ」


 破砕機がぐるぐる回る喉元に、銃弾をたたきこむも、何の変化もない。


 どこだ。どこだ。

 落ち着いて見ろ。

 敵を見ろ。


 額にチカチカとしたLEDランプ。

 パソコンだったものがそこにある。


 まさか、と思いつつ、それを撃ちぬく。


「わ!」


 家電百足が、俺を放り出した。

 ビンゴ、か?


「額だ!」


 エマとヘンリーがそこを狙い撃つ。

 破片が飛び散る。


 地べたに投げ出されたまま、俺もグロックをかまえ、額を狙う。


 光るパソコンの筐体が砕け散ると、家電百足の動きが止まった。

 喉奥の回る破砕機も止まっている。


「意外と見掛け倒しというか、呆気なかった、かな……」

 エマに向かって言う。

「そうね。弱点がわかりやすいっていうのは、大物の特徴かしら。ビッグリグも意外と呆気なかったし」


 そうか。ゲームだから、ちゃんと倒せるレベルに設定されている、ということか。

 ノーミス、ノーコンティニューが求められるあたり、鬼畜仕様だけど。



「Giii……iigig……」



 家電百足が身じろぎした。

 あわててグロックを構えると、半壊した頭を残して起き上がった。


「こいつ、ひょっとして、首を落としても、残りは生きてるのか!」

 と、エマの声。

 俺は間髪入れずに叫ぶ。

「ヤバい! 逃げろ!」


 目標は、家電百足がはいずり出てきた、上の階に続く階段。

 さっさと立ち去るのが吉だ。

 復活には時間がかかるのか、家電百足は、なかなか大きく動こうとはしない。

 足をじたばたさせる程度だ。


 その隙に階段を駆け上がる。


「先に行って」

 エマが言った。

「何するつもりだ」

「ここで使わせてもらうわ」

 そう言って取り出したのはガーデンショップで作った手製爆弾。

 にこりと笑っている。

「上で待ってる。ヘンリー行くぞ」

「わかった」

「死ぬなよ」

「死なないわよ」

 自信あふれた笑顔。

 だが、一瞬不安そうな表情を見せたのを見逃しはしない。


 それをねじ伏せ、笑顔を見せる。

 恰好いい女だ。

 女になった俺が言うのも何だが

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