第22話

 メイド服の上からタクティカルベルトを巻く。

 グロックのマガジンを四本。

 そして、スリングを加工して、日本刀を固定する。

 その上で、レミントンを持つ。


 ヘンリーは、メインアームをレミントンからスターム・ルガーのミニ14に変えた。

 ミニ14はウッドストックの狩猟用ライフル。

 AR15系の金属を多用した軍用ライフルのようなライフルと違い、ウッドストックのおとなしい外見の故に、この店でも取り扱いがあったのだろう。


 エマは変わらずM4カービン。

 タクティカルベルトに弾倉を追加で挿している。


「さて、上か。行こう」


 家具売り場を抜けると、エスカレーターと階段があったので、そこから上へ。

 そして、上の階から巨大な百足が覗いていた。


「……」


 思わず息を飲む。


 百足は、よく見ると家電の集合体だった。

 胴体は洗濯機。無数の足は掃除機で。頭部はテレビやパソコンでできている。

 だが、ロボットではなく、肉感のあるものに変形しているのが、また気持ち悪い。


 攻撃手段は、おそらく大あごみたいなアームだった。

 そう、UFOキャッチャーのアームを巨大にしたもの。

 そこが刃物でないのはありがたいのかどうか。

 だが、凶悪なのはそこじゃない。

 その喉元が洗濯機のドラムになっているのだが、そのドラムの中が細かなトゲが生えていた。

 そして、回ったり止まったりを繰り返す。

 アームがそこに獲物を送り込む役割ということだ。



「エマ、ヘンリー、左右に展開。十字砲火。俺は正面で引き付ける」

「そんな、あなたが危な……」

「兵隊商売がそこ引き受けなくてどうする」


 俺は笑ってみせた。


「行け!」

 そのままレミントンで家電百足の頭に散弾を撃ち込む。


「Giiiiigigigigiiiiiiiiii」

 金属が擦れたような叫び声。


 エマとヘンリーが左右へと展開する。


 俺も身体をよじって、アームを避ける。

 がしゃんという音とともに、売り場のソファーやら何やらを喉元の破砕機めいた喉へと押し込んでいく。

 それらはあっさりと砕け散っていく。


 再び、俺の方を見る。

 頭部の目に当たる部分のモニターに俺が映っている。

 眼鏡のメイドという、実に違和感のある俺が。


 一度、鎌首をもたげて、その反動で飛び出してくる。


 エマとヘンリーが射撃を始めた。

 俺もレミントンを向け、問答無用で全弾撃ち込む。


 アームが足元をすくってきた。

 転がされる。

 レミントンが手を離れた。

 それを追うのはやめた。

 どうせ、重くて、いつまでも持っていられない。

 すっぱりと捨てて、グロックを抜く。


 エマだけでなく、ヘンリーの射撃も思ったより正確で、百足の首あたりに銃弾が集中している。

 だが、死ぬ様子はない。

 だとしたら、もっとわかりやすい「弱点」があるのだろう。

 それは、どこに。

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