第19話

「僕の目的だったな」

 ヘンリーがしゃべり始めた。

「チームの目的イコールあんたの目的でいいのかな?」

「いいとも。金を出したのは僕だ。グレイソン君も含めて、メンバーの選別をしたのも僕だ」

 胸を張っている。


「ふむ。それで、何をしようとした?」

「パンドラ島へ行こうとしたのさ。南太平洋のパルトケナ諸島の一つ。もっとも、諸島唯一の有人島であるパルトケナ島からでも400kmも離れた所にある島だ。ユーリ君、君は超古代文明を信じるかね?」

「何とも言えないな」

「うむ、ノリが悪いな。いずれにせよ、僕らはそこに向かっていた。実際に着いたのかどうかの記憶がなくてね。財団の海洋調査船フレイヤでそこへ向かっていたのはたしかだ。君たちも覚えているんじゃないか」

「船に乗って、どこかへ到着したあたりまでは何となく」

「そのあたりまでは私も」

 俺とエマが似たように返す。


「もし、たどり着いたとしたら、僕らは神殿を探していたはずだ」

「神殿?」

「そうだ。パンドラ島には、古代の神の神殿があったはずなのだ。それも、今もなお生きている神の」

「生きている神?」

「そう、僕らはCと呼んでいる。1925年、それは海底火山の活動で一度目覚め、そして今なお眠りについている」

「何で神様が生きているんだ?」

「それは、日本人の君の方が理解しやすいと思うのだがね。神とは僕らの上位存在だ。肉体だって持つさ」

「ああ、それは何となくわかる。絶対の唯一神ではなく、ということか」

「そうだ。とは言え、その正体は依然として謎だがね」

「それで私に?」

 とはエマ。

「そうだ。グレイソン君に渡した肉片は、その上位存在の肉、そのものだ。とは言え、にすぎないがね。1925年の目覚めの際、手に入ったサンプルを後生大事に培養して、できあがったサンプルさ」

「そうか、すると俺たちは神の祟りにあって、こうしている可能性があるのか」

「祟り?」

「日本では、神仏や霊魂などが人間に災いを与えることを祟りという。その神を怒らせたか何かで、こんな目に合っているということだ」

「それにしちゃ、ずいぶんな祟りじゃないかい。君たちの戦いは見たが、ずいぶんと子どもっぽいというか。登場している災いが、子どものおもちゃみたいなイマジネーションだ」

「ああ、それは感じる」

「だとしたら、もう一つ考えられることがあるわ」

 と、エマが口にする。

「と、いうと? 何かねグレイソン君」

「私たちは、神様にのよ」


 その言葉にヘンリーは大きくうなずいた。


「非常に興味深い意見だね」

「そう? 子供のおもちゃみたいなモンスター。そして、ゲームの設定みたいになっている世界。単に我々を殺したいだけなら、こんなめんどくさいことする?」

「その意見にはちょっと同意する」

 と、俺は口をはさむ。


「遊ばれている、というのはいい表現な気がする。祟りというよりも、しっくりくる」


 ヘンリーが宙を仰いだ。

「ふむ。遊ばれている、か。で、君たちは、これからどうする気だ?」

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