甚雨
二人分の大号泣がさらなる雨を呼び寄せたのか。
外に出てはヤバいと傍目に分かるくらいの砲丸雨の襲来に、静まるまでここに居る事になった俺たちは今。
お互い小学三年生の自分の幽霊と向かい合っていた。
想いが通じ合ったので、消えても、戻ってもおかしくはないのだが、その予兆は全くなし。
と、言うより。
むしろどんどん実体化していっているような。
え、うそまさか。
三十九歳の俺たちの命を奪って、実体化している、とか。
三十九歳の俺たちを吸収して、九才から人生をやり直す、とか。
え、うそよくない。
若返って、学生時代にしか味わえない青春を梅田さんと一緒に過ごせるなんて。
そんな、夢みたいな、奇跡が今まさに。
嫌うん分かってるよそんな事あるわけないだろうって蔑んだ目で見るなよ。
「まあ、俺たちにしか見えてないなら別にこのまま居てもいいんだけど」
「そうだな。最初はどうにかしなければいけないと混乱もしていたし焦ってもいたが、別段何かよからぬ事をやらかすわけでもないし」
「じゃあ、とりあえず様子見って事でいいか」
「ああ」
「じゃあ、よろしくな」
「よろしく」
俺と梅田さんは小学三年生の自分の幽霊に握手を求めた。
と言っても、熱く握手を交わせるとは思っていない。
いくら実体化しているように見えても、幽霊は幽霊。
本はどうしてか持てるようだが、握手は無理だろうと思っていたが。
うん。握手もできました。
うん。君、結構握力強いのね。
骨がきしんでいるよ絶対気のせいじゃないよ。
(2022.9.12)
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