積雨
三十代前半に、ふと、思ってしまったのだ。
不満なんて抱いていなかったはずなのに。
順当で平和で静かな生活を送れている日々に、安堵して感謝していたはずなのに。
どうして思ってしまったのだろうか。
今の自分が嫌だなんて。
違う自分になりたいだなんて。
どうして。
どうして私は。
彼を傷つけるだけの甘え方しかできなかったのだろう。
どうして。
望み通りに違う自分になれたのに、疲れたと思ってしまうのだろう。
どうして。
別れる時に彼に謝れなかったのだろう。
どうして。
彼と別れて数年経ってから。
梅雨の中。
彼と踊る夢を見ていたのだろう。
彼に求婚される夢を見たのだろう。
私が死ぬ夢を見てしまったのだろう。
どうして。
小学三年生の時の私が、しかも花嫁衣装を着て、傍に居るのだろう。
分からない。
分からなくなってしまったんだ。
私は何がしたかったのだろう。
(2022.8.4)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます