無縁
涼しく過ごしやすい日もあれば、蒸し暑く過ごしにくい日もあり、はたまた今は梅雨ではないのかと首を傾げるほど快晴が続いたかと思えば、災害級の豪雨を叩きつける梅雨時。
鬱々天候だけではなく、目まぐるしく変わる天候に精神がやられるのか。
両親は口にする。
おまえはまだ結婚しないのかと。
結婚がすべてじゃない。
両親は梅雨以外では晴れやかに言う。
人生一回きりだ好きにしろと。
この時期をやり過ごせばいいさ。
両親が毎日暗い顔をして言おうが去年までの俺は気楽に接していられたが。
今年に限ってどうしてか。
きっと俺も精神がやられていたのだろう。
探すよと両親に宣言していた。
訳あって、生身の女性には恐怖しか抱かないので、幽霊の花嫁さんを。
金と暴力に無縁の存在を。
俺は走り出した。
しとしと降るゆかしき梅雨の中を。
墓地に向かって。
俺は知らなかった。
両親が私たちが追い詰めたせいであの子がおかしくなってしまったと、さめざめと泣いていたなんて。
(2022.6.7)
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