第6話 兄弟と共に


 有り難くご飯を頂戴し終わり、私は口の回りを舐めとった。

 意図せず起こしたこの行為、人間だったらまずしない。もはや犬の習性に逆らえないようだ。

 慣れていこう。


 そんなことを思っていると、脇から何かがのし掛かってきた。


「きゃんっ」


 見れば元気一杯の子わんこが、嬉しそうに尻尾を振って私を見つめていた。


 うぅっ! 可愛すぎる……!


 不意打ちで心臓を撃ち抜かれ、私はそのままぱたりと倒れた。

 なんだこのけしからん世界は。幸せすぎる。


 本当なら、こやつらを抱き上げてモフモフしてすりすりしたいところである。けれどそんなサイズはないので、今なりの楽しみ方に切り替えだ。

 そう、憧れのもこもこへのダイブ。その子犬特有の柔らかな毛に、思う存分埋もれてやる!

 期待を込めてむくりと起き上がり、とりゃあと精一杯短い前肢を振り上げる。そうして飛びかかった兄妹はふっかふかー……でもない。


 思えば自分もモフモフだった。

 確かにふわふわとした柔らかさはあるが、素肌で楽しむほどのふかふか感はない。

 誤算だ。


 内心うむむと唸っていると、下敷きにしていたわんこがばたばたともがき、拘束から抜け出す。その拍子に私の身体はぽてりと転がり、そやつがお返しとばかりに投げ出された足に噛みついた。

 全くもって痛くないけど、やられてばかりの私じゃない。


 よし、こうなったら全力で遊ぶ!

 前足で相手をてしっと叩き、がう、と大きく口を開いた。


 それから私は上になったり下になったりしながらころころと床を転がり、兄妹を追ってぴょこぴょこと駆け回った。途中でもう一匹が乱入して三つ巴になっても、息が切れてもはしゃぎ続けた。


 こんなに遊んだのは何年ぶりだろう。


 本当に楽しくて幸せで、こんな時間がずっと続けばいいと思う。

 けれど、そこは子犬の体力だ。長くは持たず、私達は揃いも揃って電池が切れたように床に懐いた。


 あー……、これ、また寝ちゃうなぁ。


 ほどよい疲労感が眠りを誘う。

 重くなってきた瞼を持ち上げて回りを見れば、いつも間にやら兄妹達も目を閉じていた。


 ふふ、おやすみ……。



 ――そうして私はまた、夢の世界へと旅立った。


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