第7話

「ごめん、待った?」と俺は靴箱で待っていた黒宮さんに声をかけた。

「いいえ、待ってません」


 よかった、今来たってことだよな。

 昼休みに待たせておいて放課後にも待たせてしまうということは避けれてよかった。


「帰りにどこか寄ります?」

「そうですね、クレープとかどうでしょう」

「うん、いいね」


 こうやって異性とそれも黒宮さんと二人っきりで帰るなんて緊張しかない。

 

 心臓がドクンドクンとうるさい。


「あの……手を繋いで帰りませんか?」と少し恥ずかしがりながらそう言う黒宮さんを俺はつい。


「……えっ!?」と可愛らしい声で驚く黒宮さん。


 抱きしめてしまった。


 うわっ、俺は何なってんだよ。

 今のが可愛いからって抱きしめるのは違うだろ。


 俺はすぐに黒宮さんから離れて。


「その、ごめん。つい可愛いくて」

「ううん、大丈夫です。むしろ、嬉しい……です」


 ああ、俺は本当に幸せ者だ。

 こんな可愛い彼女、多分これから先一生できないだろう。

 絶対に大切にしよう。


「ありがとう、じゃあ手を繋ぐとしようか」

「はい!」


 黒宮さんの手は俺の手よりも一回り小さく、とてもひんやりとしていて気持ちがいい。

 まさか黒宮さんと手を繋ぐことができる日が来るなんて思ってもいなかった。


 その後は手を繋ぎ、クレープ屋さんに向かい俺はチョコいちご、黒宮さんはチョコバナナのクレープを買い。


「鈴木くん、少しやりたいことがあるのですがいいでしょうか?」

「ん?」

「とりあえず、カラオケに行くとしましょう。そこでクレープを食べるとしましょう」


 カラオケ……個室。


 ダメだ、変なことを考えちゃダメだろ。

 違う、そういうのじゃないんだ。

 うん、絶対に違うに決まっている。


 こういうところで変なことを考えてしまう自分が恥ずかしい。

 向こうは絶対そういうつもりで言ったわけではないのに。


「うん、わかった」




 ということで、俺と黒宮さんは近くのカラオケボックスへとやってきた。

 

 そして、俺と黒宮さんはソファーに座るや否や、黒宮さんはこちらを振り向いて言った。


「そのっ、変態かもしれないのですが……鈴木くんのクレープと私のクレープを鈴木くんは鈴木くんのクレープを一口、私は私のクレープを一口、口に運んでその状態でキスをして口移しがしたいです。こんな風に──」と黒宮さんは一口、自身のクレープを口に運びそのまま俺にキスをしてきた。


 口の中にはクレープの生地とチョコバナナの味が広がった──。


 黒宮さんは俺の口から離れると。


「次は鈴木くんもお願いします」


 ……ガチかよ。

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