第2話

 放課後、俺は黒宮さんと一緒に帰る。


 こうやって女子と帰るのは中学一年の頃、裕子と帰って以来である。

 そのため、というのもあるが黒宮さんと一緒に帰っているため心臓がうるさい。


 夢じゃないんだよな、俺は本当に黒宮さんと付き合ったんだよな。


「……黒宮さん?」

「はい、どうしたんだすか?」

「その、なんで俺のことが……その、好きと。ほら、俺たちって今日初めて喋った気が」

「じゃあ、逆になんで鈴木くんは私の告白に、はい、と答えてくれたんですか?」

「す、好きだから……です」

「なんでですか?」

「それは、その……黒宮さんに目が惹かれて気づけば好きに……」


 一体俺は何を言っているのだろうか。

 自分でもわからん。


 すると、黒宮さんはニコリと微笑み。


「私もそういうことです」 

「そうなんですね……俺なんかのことが好きな人がそれもそれが黒宮さんで俺は嬉しいです」


 黒宮さんは少し頬を赤く染めて。


「わ、私もです……! 鈴木くんに告白しようとは前々から考えていたのですが振られたらと考えたらなかなかできず……でも、いざしてみたら両思いだったらしくて嬉しいです!」


 ああ、なんで彼女はこんなにも可愛いのだろうか。

 

 一生届かないものだと思っていた。

 片想いで終わると、けれどそうではなく、付き合うことに成功してしまった。


「ちなみにいつからですか? その、俺を好きになったのは」

「そうですね……高校一年のちょうどこの時期だから、五月ごろですね」

「はは、俺も同じです」


 くそ、こんなことなら俺からもっと早くに告白するべきだったのかもしれない。


「そうなんですね、同じ時期で嬉しいです!」


 正直、黒宮さんが俺のことが好きな理由がわからないが、かといって何故俺が黒宮さんに惹かれているのかわからない。  

 単なる顔なのだろうか……。

 俺は一体彼女の何に惹かれてしまったのだろうか。




 次の日の昼休み──。


「……久しぶりだな、裕子。こうして話すのは三年ぶりか?」


 今日の朝、トークアプリにて裕子から『今日の昼休み、文芸部に来て欲しい』と来ていた。

 そして今に至る。

 ちなみに文芸部は裕子一人しかいない廃部寸前の部活である。


「うん、久しぶりだね優希」


 こうして久しぶりに見ると裕子が学校内で人気な理由がよくわかる。

 少し彼女の目からハイライトが消えて見えるのは気のせいだろうか。


「用事ってなんだよ」


 俺はこれから黒宮さんと一緒にご飯を食べるという約束をしているわけなのに。

 黒宮さんと俺が付き合ったというのは昨日、その現場を見ていた者がいたらしく一瞬にして広がってしまった。

 朝なんて春馬が嫉妬していたものだ。

 あいつには一つ上の彼女がいるのに。


「ねえ、優希って昨日から黒宮玲奈って女の子と付き合いはじめたんだね、おめでとう」


 なるほど、俺にそれを伝えようとしていたのか。


「ま、まあな。ありがとう」

「うん、おめでとう。でも、優希?」


 裕子は俺に近づいてきてネクタイを引っ張る。

 

「私たちって将来結婚するよね? だったらこれって不倫だよね?」


 突如彼女の吐いたセリフに理解できなかった。


「え?」

「だってさ、幼稚園の頃行ったじゃん、将来お嫁さんにするって」

「いや、あれは……違うだろ」


 その言葉を俺も覚えていた。

 けれどあんなの幼い頃のセリフに過ぎない。

 

「ううん、違くないよ。ねえ、優希。もう一度聞くけどさ、私たちってするんだよね?」

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