俺に恋人ができた途端幼馴染が盛大に病んだ
さい
第1話
「優希はいいよなーあの学年一の美少女と名高い、白崎さんと家が隣だし幼馴染でよ!」と俺の唯一の友達……いや、親友の久遠寺春馬は言う。
誰もがそう言う。
俺が白崎裕子と幼馴染でいいな、と。
でも、俺はそうは思わない。
「そんなことない」
「またまた〜、く〜、ずるいなあ」
だって、もう家族のような物で彼女を可愛いとは思ってもそれ以上の気持ちが湧かないから。
もし、俺が彼女と幼馴染ではなかったら、きっと彼女を好きになっていたんだろう。
だから、俺は彼女と幼馴染であることをこれから先も一生恨み続けるのだろう。
俺、鈴木優希は五月のある日の放課後、屋上へとやってきた。
というのも、今日の朝、『放課後、用事があるので屋上で待ってます』と明らかに女子の字で書かれた差出人不明の紙が靴箱の中に入っていたからである。
放課後の屋上は昼休みとは違い、人気がないため屋上を選んだのだろう。
……告白?
いや、さすがにそれはないよな。
うん、ないはずだ。
俺は屋上の扉を開け、屋上へとやってくるとそこには──。
「来てくれましたね……」とベンチに黒色の長い髪の一人の女子……いや、俺は彼女を知っている。
「え、黒宮さん?」
黒宮玲奈、裕子の次に人気の女子だ。
「名前、知っていてくれて嬉しいです」
そりゃあ、有名人なのだがら。
当たり前である。
そんなツッコミは心の中だけにしておいて。
俺は黒宮さんに問う。
「えーっと、俺たち初対面ですよね? 用事とは……?」
告白される、そんな可能性は黒宮さんの時点でなくなった。
俺のようなやつが彼女に告白されるなんてあるはずがないからだ。
「はい、そうです。お互いに名前は知ってるみたいですね、それでですけど……鈴木くんって好きな女の子とかっていますか?」
「な……っ!」
まさかの恋バナで俺は頬を真っ赤に染める。
「いや、いませんよ……」
言えない、俺の好きな人が黒宮玲奈、あなたですなんて。
「そうなんだ、じゃあ鈴木くん?」
「はい、なんですか」
黒宮さんはベンチから立ち上がり、俺に近づいてきて、五センチほどのところに立ち上目遣いで言った。
「私と付き合ってくれませんか?」と。
○
「まじかよおおお、玲奈ちゅあんが付き合ったってよおおお!」
朝、廊下で男子のそんな声が聞こえた。
「ああ、しかもよ、鈴木優希だっけか?」
「誰だよ、それ」
「ザ普通って感じの男……」
「なんだそれ、不似合いじゃねーかよおおお、斎藤とかスペックが高えやつなら納得するけどよお……俺の方がよくねえかあああ!?」
え……?
何それ、どういうことなの?
私、白崎裕子は足を止めてその場で下を向く。
……嘘だよね?
「しょうがねえ、俺は裕子ちゅあんを……」
「おい、目の前にいる!」
「やべっ」と二人は去っていった。
ねえ、優希。
人違いだよね、そうだよね?
だって、昔私をお嫁さんにもらうって言ってたもんね?
私は鈴木優希が好きで好きで好きで好きで大好きだ。
きっと、優希もそうだろうと思っていた。
でも、違ったみたい。
中学に入ってからどんどんと小学校の頃のような近い距離ではなくなっていき、今ではもう赤の他人のようなものだ。
思春期だから仕方がない、そう思っていた。
けれど違うみたい、私を嫌いになっちゃったからみたい。
ポロリと一滴の涙が頬をつたり廊下に落ちる。
おかしいよ、優希。
私が優希のお嫁さんになるんだよ?
こんなのおかしいよ!
……黒宮玲奈、絶対にあの子から優希を返してもらう。
そう、それしかない。
私の優希を取られてしまったのだ、そうするしか取り返せないんだ。
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