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同じクラスの友人が殺された
それは昨日の夕方頃、クラス内のグループラインで伝えられた。
丁度現場になった家の向かいに別のクラスメイトが住んでいたらしく、詳細な情報はどんどん流れていた。
なんでも、殺された友人は近所の家へ侵入しその家の母子を殺害。
その後帰宅した父親が鉢合わせて、復讐されたんだとかなんとか。
もう昨日の出来事であるにも関わらず、未だに話題の勢いは止まらない。
「…通知、うるさいな」
鳴り続ける通知音が煩わしくなり、スマホの電源そのものを落とす。
ぼんやりと、死んだ友人について考える。
なんで殺したのか。
まぁ、それは分かりきってる。
大方、ネットに拡散されてる"誰かを殺せば生きられる"とかのどれかを鵜呑みにしたんだろう。
誰が最初に発信したのかは知らないけど。もうネット上で探せば珍しくはない程度にはこの情報は流れている。
どうせ最初の誰かの発信を見た奴が面白がって拡散して、それを見た奴がまた拡散してで鼠算式に広まったんだろう。
広がる馬鹿も馬鹿だが、鵜呑みにする奴の馬鹿さはもう愚かといし言いようがないな。
…実際。アイツもそれを鵜呑みにして、殺して、それが原因で殺されてる。
生きたくてやった行動で死んでるんだ。本末転倒にも程がある。
…アイツは、いつもそうだった。
自分が幸福になるために、他のモノを踏み台にする。
例えそれで踏み台が壊れても、その踏み台はあくまで"物"であって"者"じゃない。
者でないから、それは自分と同じ存在ではない。
本当、死んでも自業自得な奴だった。
……まぁ、それはみんな似たようなものか。
大半の人間が、大なり小なり内心で周囲の不幸を嘲笑い他者を見下す。
その本性を全く隠そうとしなかったアイツは、案外一番人間らしい生き物だったのかもしれない。
なんて。
こんな風に考える自分も、世間一般の常識から見ればおかしいんだろう。
人殺しを庇う奴だ、と非難を浴びるのは目に見えてるわけで。
別にわざわざアイツを庇って世間様から非難の声を浴びる。
そんな事をする程の情はない。
そんな事はしないけど。
それでも、アイツの事を否定はしない。
アイツのやった事を肯定はしない。
けど、その理由を。
生きたいと願った事を、否定したくはない。
だって、それを否定したら。
否定してしまったら、自分達も生きたいという願いを持つ事自体が赦されなくなる。
あの得体の知れない夢から今日は五日目。
もしあの夢が本当なのだとしたら今日で世界は終わって、世界中の全員が死ぬ。
将来の夢なんてなかった。
熱中するような趣味もなかった。
煌めくような恋もなかった。
青春の全てを賭けるほどの情熱もなかった。
「死にたい」が口癖になる程度には、人生に飽きていた。
それでも
死にたくなんて、なかった。
あぁ、そうだ。
死にたくなかった。
「死にたい」なんて口先だけで、本当は死にたくなんてなかった。
非凡に憧れて。非日常を望んで。
それで良かったのに。
知りたくなんてなかった。
平凡な日々がこんなに簡単に無くなるなんて。
日常がこんなあっさり崩れるなんて。
"いつも通り"がこんなに大切だなんて。
知らなくてよかったのに。
なんで、こんな最後になってから気付かされるんだろう。
せめて、もっと早く気付いてたら。
もっと早くに分かっていたら、もっと今よりずっと上手く出来たのに。
きっとこんなに後悔もなくて、満足して終われるように、出来たかもしれないのに。
もう遅い。
今更気付いたって、きっともう遅いんだ。
だって、もう…。
視界の端から徐々にノイズが走る。
それと同時に肉体は末端から崩壊を始める。
残されていたタイムリミットが、終わったのだ。
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