普通の男子高校生であるの俺の日常は、どうやら美少女が絶対につきものらしいです。〜どうやら現実は思ったよりも俺に優しいようでした〜

第10話.休日の夕方

　電車に乗ってしばらくの間揺られていた。

　座席には人がほとんど座っており、俺は出入口付近にもたれながら横に流れていく外の景色をぼーっと眺めていた。

　外は曇り空。

「一雨来そうだな」

　ボソッと独り言を呟くと、近くの座席に座ってた大学生位のお兄さんも窓の外を見た。どうやら俺の独り言が聞こえてたらしい。

「あ、ども」

「どうも」

　お兄さんと目が合い、俺達は挨拶を交わした。

　しばらく揺られていると、家の最寄り駅に着く。最寄り駅にはあまり人は居ない。

　まぁ、ただの住宅街な上に近くに超オシャレなカフェがある訳でもないし、あるとしたら夜になったら綺麗な夜景を見れる場所があるって事ぐらいだ。

　家に向かって歩いといると、朝送り出した現うつみがその友達と思しき子と一緒に楽しそうに話しながら歩いている。

　現うつみは俺には気付かなかったようでそのまま歩いて行く。俺は声をかける必要も無いので、そのまま家に帰る事にした。

✲✲✲

　家に着くと、手を洗いうがいをする。ここまでが帰宅してからの一連の流れ。もう癖にすっかり癖として染み付いているのだ。

　リビングに行き、ソファに深く座り込むとスマホを取り出す。空宮に明日の部活が休みになった事を伝えなければ。

『明日の部活は休みだぞ』

　送信してから少しするとスマホのバイブが揺れる。

『分かったー！というか、刻はまだ本屋さんにいるの〜？』

『いや、もう帰ってきた』

『そっかー。あのさ、話は変わるけど今日家に晩ご飯食べに来ない？何かお母さんに部活に刻と一緒の所に入部したって話したら、久しぶりにお話したいから連れておいでーって』

　なるほどね。

　となると、あとは現次第だ。あいつが早く帰ってくるなら行こう。

『現が早く帰ってきたらお邪魔させてもらう』

『分かった〜。じゃあ現ちゃんが早く帰ってきたらすぐ来てね！』

『了解』

　メールをし終えるとソファに寝転んだ。

　なんだか天井の明かりがぼやけてくる。次第に周りも暗くなって……。

✲✲✲

「……い。……兄」

　どこか遠い所から声をかけられている気がする。

　何だ？眠いんだけど。

　そう思った次の瞬間俺の体は強い衝撃を受けた。

「痛ったぁ……」

「刻兄が全然起きないからだよっ！」

　声のする方向を向いてみると、そこには膝よりちょっと上の長さのスカートを穿いた我が妹、現がいた。朝出かけた時と同じ格好。そして今現在俺はソファから落ちている。

（ん？ちょっと待て、スカートって事は少し上を見たら大変な事になるんじ……）

　そう思った時にはもう遅かった。本当に現か確かめるために顔を見ようとしたせいで、上を向いてしまっていたのだ。

　そして現の顔を見ると、顔を怒りか恥ずかしさからかどちらからか分からない感情で、顔を真っ赤にしていた。

「と、刻兄の……馬鹿っ！変態！ロリコンっ！！」

「ご、ごめんって！わざとじゃないん、グヘッ」

　妹からの罵声を浴びながら、俺は鋭い蹴りを鳩尾に食らった。そこでまた俺の意識は途絶えている。

✲✲✲

　数分経っただろうか、俺はまた目を覚ました。

　むくりと起き上がってみると鳩尾はまだ痛む。

　ソファにはご立腹な鬼神マイシスターが座っていた。

「あ、やっと起きた。何で10分も気絶してるの。そこまで蹴り強かった？」

「はい、もろ鳩尾に入りました。とても痛かったです」

　そう言うと、現はこめかみを抑えている。頭痛かな？

「まぁ気絶の件はどうでもいいや。それより刻兄。妹のスカートの中を見た事について言うことは？」

　凄い目付きで現うつみがそう言う。

　一応気絶してのだが。結構やばいからね。

　あとは、背景になんか鬼が見えますよ。

「えーと……大変申し訳ございませんでした！」

　俺は日本に代々伝わる土下座をして誠意を見せる。

「面をあげい」

「ははっ」

　何か時代劇風になっているが、そこはもう気にしない。

「お主は大罪人じゃが、罪を償う方法を一つだけ教えてやろう」

「そ、それを教えてはくれませんか！」

　罪を簡単に償えそうな予感。

「高級プリン」

「は？」

　突然言われた単語に、俺は思わず声を出してしまった。

「高級プリンを一つ私に買ってこい。それで償ってやろう」

（まじかよ、難しい事ではないがお財布事情が難しい問題だこれっ！）

「買えぬと言うのなら、大罪人のお前には島流しの刑をあたえるっ！」

「罪重っ！？」

　これは買わないと、少なくとも家からは追い出されるやつではないか。

「分かりました。この刻、罪を償うために高級プリンを明日の学校帰りに買ってまいります」

「ふむ、それで良いのだ」

　ほっとため息をつくと、時計を見る

　時刻は5時。

　えーと家に帰ってきてから、空宮に諸々のメールをして寝たのが多分1時半とかだったから、3時間は確定で寝ている。

（まじかよ、もったいないことしちゃったな）

　そんな事を考えているとふと思い出した。

「あ、現？空宮に今日の晩飯誘われてるけど行くか？」

　俺は思い出した内容を現に話す。すると現は目をキラキラさせて犬みたいに近づいてきた。

「行く行くっ！」

「分かった、じゃあ6時くらいに家出るからそのつもりでな」

　そうとだけ伝えると、二階にある自室に戻った。

　さてと、準備やらなんやらしますか。

✲✲✲

　時刻は5時50分。

　家を出るまで時間までと少しだ。俺は玄関に歩いて行き、最後の仕上げをしている現を待つ。

　女の子の支度は時間がかかる。でも俺は耐性ついてるから大丈夫。苦でもなんでもない。

「おまたせ〜」

　後ろから声をかけられて振り向く。どうやら支度が完了したらしい。

「じゃあ行くか」

「そだね」

　ガチャりとドアの鍵を開け俺達は外に出る。

　心地のいい風が吹き抜け、空はまだほんのりと明るい。

　俺達は歩き始めた。

　いざ空宮家へ。