第21話 死神
あの後、鈴音も呼ばれ提案についてはすぐに了承されたので、入隊後のついて細かく話し合った。そこで決まったのが、最初に話にあった通り、高校まではほぼ自由。そこに付け加えて、国内最高の魔装士の育成高校への無条件での入学がまず決まった。これは、元帥直属の部隊という扱いになる以上、半端な学歴ではいけないと言ことらしい。また、入学後については寮ではなく高校近くに家を用意するらしい。元の家は、軍の手配した管理人が付きいつでも帰れるようにするそうだ。破格の対応である。
そして、軍に入るにあたって鬼島は、
「部隊の人数が2人ってのは少ないから、見込みありそうな人を君が勧誘して、育成してね。それと、水無瀬を他部隊との連絡要員兼指導役に君の部隊に入れるからよろしく。あ、それだと3人か。まあ、いいや。目標は全部で10人くらいね。これ、初任務だから」
と、軽い調子で初任務を言い渡してきた。曰く全部自由にやっていいよ。とのことだが要は丸投げである。まあ、軍内で竜司のように魔法が使える者がいないというのが理由の大部分を占めているため、仕方ないといえば仕方ないのだろう。
そんなこんなで話を終えて昼休み。竜司はレーヴェといつも通り昼食を食べていた。ただ、少し違う部分もあったが。
「まさか、私が軍の制服を着ることになるなんてね」
「そうか?」
「そうよ、エルフの軍属なんて私が初めてなんじゃないかしら」
そう竜司たちは学校の制服ではなく、軍服を着ていた。軍にはいったんだからぞれがわかる服装をね。と鬼島が渡してきたのだ。これから、休日以外はこれを着るようにとのこと。
「それよりも問題は人集めだろ。あと七人どうやって集めろと。部隊名もひでえし」
「模擬戦のせいで呼ばれるようになったやつね。それで死神隊だったわね」
模擬戦の支部長を気絶させたあの様子から、死神とネットで騒がれるようになった。軍内でも監視していた者が次々にその意識を刈り取られていくことからその呼び名が定着しているらしい。竜司としては、自分の黒歴史的な記憶を掘り起こされるような呼び名に聞くたびに悶々としていた。
「まあ、いいじゃない。人集めはゆっくりでいいって言ってたし、のんびりやりましょう」
「それもそうだな。やってみたい魔法もいっぱいあるし。そのついでって感じで」
「ええ、それでいいと思うわ。それに、あなたの作ろうとしてる魔法とっても面白そうだから楽しみしてるの。無理して辞めてしまうよりよほどいいわ」
人集めはいつもの生活のついでということにして、竜司は魔法の事を考える。せっかく魔法使えるようになったのだ、憧れたアニメや漫画の技の再現がしたい。そう思って日々霊界にこもって、弱い魔物相手に実験を繰り返していた。
レーヴェもそばにいるので、完成したら教える約束をしている。うまくできれば、見た目も破壊力も抜群な魔法になるだろう。発動したらきっと気持ちいい。ちなみに窒素攻撃はすでに教えてレーヴェも使える。
「おう、レーヴェも使えてかっこいいやつだから期待しとけ」
「ええ、期待しているわね」
そう話しているうちに昼休みは終わる。話の続きはまた放課後にということで、午後の授業へ向かうのだった。
そして放課後。竜司とレーヴェはが学校近くにある川の橋の下にいた。いつもここから霊界に入っているのだ。しかし、今日はいつもよりメンバーが多い。
「で、なんでいるの?」
「職員室から出るところを、私が連れてきたの。ほら、水無瀬さん同じ隊にいることになったでしょ」
「な、なんだ。文句でもあるのか?」
「いや、べつに。文句はないよ」
強気でふるまっているようだが、声が震えている。模擬戦のことがトラウマになっているのだろう。当事者である分、竜司はかなり気まずかった。
「はあ。まいいや、とりあえず行くか」
「どこにだ?人がいないからここでやるんじゃないのか?」
「なわけないだろ、そんなことしたら橋崩れるわ」
「そうね」
意味が分からないという顔をした、水無瀬を適当に流しつつ、いつも通り刀に魔力を流し空間を斬って入り口を作る。
「は?」
「んじゃ入るぞ」
「ええ」
「いや、ちょっと待て!なんだこれは⁉」
混乱した水無瀬が竜司たちを止める。どうやら、竜司たちから見ればいつものことだが、水無瀬にとっては違うらしい。
「なにって、霊界の入り口だろ?」
「それがおかしいんだろうが!ふつうは専用の道具を使うから定期的な間引きの時じゃないと入れないんだぞ」
「でも開けるし、別にいんじゃない」
「……もう何なのこいつ」
逆に開けないことに竜司は驚いたが、水無瀬曰く本来霊界に入るには、使い捨ての道具を使う上、それなりのコストもかかるとのこと。といっても、そんなことは竜司には関係ないのでさっさと入るように促せば、水無瀬は肩を落としうんざりしたような表情で竜司とレーヴェに続いて霊界に入っていった。
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