第16話 決戦にむけて
雪花から伝えられた能力。まず、武器としては、魔力に応じて短剣の数を増やすことができるらしい。これが『分裂』、次に『浮遊』というのはこの短剣を浮かして任意で操作したり雪花に操作を任せて攻撃できるらしい。そして属性これは、光を操る魔法が使えるらしい。ちなみに狐月は使えないそうだ。
最後の、『力』これがなかなか面白かった。
「力、つまり物理的エネルギーの操作。いわゆる物理魔法ってところか。極めたらやばいぞ、これ」
『そんなになのか』
「ああ、これなら初見殺しかもしんないけど、勝つ見込みが出てきた。ほかにもいろいろできそうだし、こいつは最高だ」
『歓喜。高揚』
自分の能力を褒められたのがうれしいのだろう。強い喜びの感情が伝わってくる。
「ま、今は魔力すっからかんだし、魔法系はなんもできねえけど…」
『無念』
今度は悲しそうな感情だ。活躍できると思ったが、自分の影響でできないことに落ち込んでいるのだろう。
『では、回復を待つ間、刀の使い方を練習すればよいのではないかの。今は時間を有効に使うべきじゃ』
「それもそうだな。うっし、じゃあやるか」
『応援』
そうして、魔力がある程度回復した昼頃まで、狐月と雪花の指導の下、刀を振り続けた。
『さて主よ、魔力は回復したようだが、どんなことをするのじゃ?」
「ああ、練習すんのは最優先で風と物理だ。次点で水と土」
『疑問、用途不明』
「まあそれは、後で説明する。まずはできるだけ魔法を遠くに飛ばせるようになんないと。今じゃ射程が短すぎる」
そう、いかに強化しながら同時に魔法が使えるようになってきたとはいえ届かなければ意味はない。今の竜司の有効射程距離は驚異の5メートル。短すぎてお話にならない。これでは蹂躙してくださいと言っているようなものである。
『そうじゃの、魔法もある程度使えるし、まずはそっちじゃの』
「てかなんでこんな短いんだよ」
『密度が低いだけじゃ。硬い石と乾いた砂。投げた時にどっちが遠くに飛ぶかなど聞くまでもないじゃろう』
「まずは魔力の密度をあげろってことか」
『うむ。しっかりとできれば効率もよくなるし、主の聞いていた30メートルなぞ軽く超えて飛ばせるぞ?」
どうやら、世間一般で言われている魔法の有効射程の30メートルは軽く超えることができるらしく、その気になれば1キロ離れていても問題なくなるらしい。これは、魔法が廃れてしまったからこその問題だったのだろう。
『方法、伝達』
雪花が魔力密度のあげ方をイメージで伝てくる。刀を振っているときに気づいたが、狐月と違い頭に負担がかからず効率よく訓練ができるため、狐月が指摘し雪花がイメージを伝えるという訓練の仕方が定着しつつあった。
この日は魔法の有効射程を伸ばすことに費やした。
そして残り二日、竜司はひたすら風と物理、土と水の魔法をひたすら練習した。
―――模擬戦前夜―――
「これで、やれることは全部終わったな」
『うむ、これで負けたら仕方あるまい』
『否定。主、不敗』
「はは、そいつはやってみないと分かんないな」
模擬戦の前夜、竜司たちは霊界の夜空を見上げながら雑談していた。
『しかし、主よ。合間を縫って作っておったあの折れ曲がった金属の筒はなんじゃ?』
『同意、疑問』
「あれかぁ。ホントは間に合わせたかったんだけど、無理だったからなまあ出来たら教えるよ」
カバンに入っているその金属を思い浮かべながら答える。剣と魔法が使える世界にはあまり合わないが、それを使ってどうしてもできるようになりたいことがあったのだ。
「それよりも明日のほうが重要だろ。作戦は覚えてるよな?」
『うむ。といっても妾はなんもできんが』
『自分、突撃』
「ああ、雪花が最初にとんで少しでもいいから隙を作る」
『あとは、そこに主が魔法を打つ、か』
「ああ、失敗すれば負ける。どうせ相手は結構強いの連れてくるだろうからな」
泣こうが笑おうが自分たちの運命は明日決まる。あとはこの一週間で用意したことを全力でぶつけるだけだ。
そしてついにその日がやってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます