第4話 似て非なる

 竜司が部屋を調べ始めてすぐ、一番気になっていた『まもの』に関しての情報はあっさりと見つかった。


「魔物学、戦術大全に身体強化術解説って…。これが中学の教科書かよ。日記の『まもの』ってのは文字通りの魔物ってわけかい。やべーなこの世界」


 町中を闊歩するモンスターを想像し、ひとりごちる。


(とりあえずある程度の知識はいるだろうから読んでみるかね)


 そう考えてまず、魔物学と書かれた教科書を手に取って読み始めた。ひと通り読むと、いろいろなことが分かった。

 まず、前提としてこの世界には魔物がいる。主にそれに対応しているのが各国にいる軍であること。警備隊もここから出ている。もちろん日本にも存在する。

 そして、魔物は突然発生するのではなく、この世界に重なるようにして存在する霊界という場所からやってくることがほとんどらしいこと。また、鬼門と呼ばれる異次元空間。いわゆるダンジョンのようなものがたびたび発生すること。これを放置すると、中からモンスターがあふれ街に大きな被害がもたらされるらしい。ちなみに鬼門と呼ばれるのは入り口が必ず北東を向いているからだそうだ。

 極めつけは、この世界には魔法のようなものがあり、種族も人間だけではないということ。

以上が教科書を読んでわかったことである。


(なんというか、まあ…ゲームみたいな世界だな。見た目は変わんねえのにな)


窓から外を見ながら思う。前の自分が学生だった頃と何ら変わりない景色だが、その裏に魔物や魔法なんていうものがあるなど全く見えない。だが、


「この世界の俺には悪いが、ちょいと楽しみだな。教科書を見る限りもうすぐその魔法が使える時が来るらしいし」


竜司の心は踊っていた。創作物の中でしか見ることができなかったはずのものたち。それに出会える世界が目の前にあることに。そして、これからそんな世界で生きていける事実に。


(んじゃ、他のも読んでみますかね)


瞳を輝かせ、今度は身体強化術の教科書を手にとったところで、


「お、お兄ちゃんおきてる?起きてたら一緒にお昼ごはんたべない?」


鈴音がやってきた。時計を見ればもう12時を過ぎている。思ったより時間がたっていたようだ。


「おお、悪いな。時間見てなかったわ。そうだな、昼飯にすっか」

「え?」


竜司の言葉に、鈴音は目を見開き驚きの表情で固まっていた。


「ん、どした?」

「う、ううん。何でもない。すぐによういするね」


そう言って、鈴音は慌てたように1階に降りて行った。


(なんであんなに驚いてんだ?…あ、もしかして最近の俺はずっと寝てたとか?ありそうだな)


先ほどの日記を思い出してそう思う竜司。急に変わったことに驚かれたのかもしれない。


「ま、どうせおかしくなってたんだし、いっか。前の俺がどう過ごしてたなんかわかんないし、俺は俺らしく行くとしましょうや」


そう割り切って竜司も下に降りていくのだった。

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