寝言

Vさんは一時期、寝言がひどかったらしい。

「全然気づかなかったんだけどね」

母親からの指摘で気づいたそうだ。

「昔からちょこちょこ寝言があったんだけど」

ふにゃふにゃ呟く程度だった。

ところがある日から、急激にはっきりした言葉を寝言で放ち始めたのだ。

「特に何かあった訳ではないから、不思議だったんだけど」

母親が翌日必ず報告してくるようになった。

曰く、飲食物があって助かっただのテレホンカード持ってて正解といった具合だ。

「なんとなくそれが引っかかってさ」

飲食物とテレホンカードは常備してた。

それから数日後、大震災が来た。

「帰宅困難者で大変だったけど」

職場からT市の実家まで戻ること5時間だったという。

だがその間、空腹に陥ることもなく公衆電話を利用した連絡もスムーズにできた。

「家族には寝言じゃなくて予言だったって言われてる」

自慢げに語った。


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