同窓会

Sさんは長崎の出身だ。

かなりの高齢にも関わらずしっかりしている。

「小学生の時に運動神経抜群の女の子がいたの。男の子がするみたいに肩に布をかけてたわ」

明るくてクラスの人気者だったそうだ。

「優しい子だった。私がいじめられて泣いてたら校庭に連れていってくれて大車輪を見せてくれたの」

家が隣で仲が良かった。

少し前に中止になった東京五輪をとても残念がってたそうだ。

「いつか東京五輪が開催されたら観に行くんだって張り切ってたわ」

その頃、親の都合でT市への引越しが決まった。

お別れ会を目前に控えた運命の日、Sさんは体調を崩し自宅にいたことで難を逃れた。

「あの子が夜まで見つからなくって」

隣に住む女の子の家族が半狂乱で探し回っていた姿が忘れらない。

「私の親も泣きながら探すのを手伝ってね」

見つかったぞー!と叫びながら女の子を抱きかかえて隣の父親が家に入る姿を見た時、直感的にもうダメだろうとSさんは思った。

「足しか見えなかったんだけどもうボロボロで」

夜のうちに女の子は息を引き取った。

学年で生き残ったのはSさん一人。

失意の中、SさんはT市へ引越してきた。

「それから東京五輪が開催されたのね」

Sさんは明日放映される開会式を楽しみに眠りについた。

「夢を見たのよ…亡くなった先生が引率されててね」

クラスのみんなが東京五輪を見にきていた。

みんな自分と同じように大人になっている。

女の子もいて、とても喜んでいたそうだ。

「不思議なことにね、その後、テレビを見ていたら夢に出てきた設備がそのまま映ってたの。私、本当にみんなと五輪に行ったの。素晴らしい同窓会だったわ」


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