楽屋
RさんはT市を含めたいくつかのエリア限定テレビ局で勤務している。
「テレビ局はね「出る」のよ〜」
人気番組の一つの制作を担当していた時のことだ。
ゲストに有名タレントが呼ばれていた。
「ご挨拶と簡単な打ち合わせがてら楽屋に行ったのね」
行ってみるとタレントもマネージャーもいなかった。
「局入りしたって聞いてたのにおかしいなって」
楽屋から出ようとするとドアが開かなくなっていた。
Rさんは助けを求めたがスマホは圏外、大声を出しても外からはなんの反応もなかった。
その時、背後から物音がした。
「思わず振り返っちゃったの。そしたら…」
見たこともない女性が鏡に向かってメイクしていた。
固まるRさんに女性が顔を向けた。
「顔半分が夜叉だったの…」
Rさんは気絶した。
しばらくして周囲の騒がしさに気づいて目覚めるとクルーたちがいた。
「私が戻ってこないから心配して見にきたら廊下の奥で倒れてたって」
楽屋から遠く離れたところにいたらしい。
「きっとね、有名になりたくてもなれなかったり嫉妬とかそういった思いが固まってああいった霊になるのね」
偽の楽屋を見せたのはきっと幽霊の意地悪なのだろうとRさんは笑った。
完
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