Qさんが幼少期の頃、同じ年頃の子供達の間で怖がられている場所があった。

「T橋って知ってます？俺が小さい頃、あの橋で妖怪を見たって話がよく出てたんです。今はリニューアルされて綺麗になりましたけどね、昔はボロボロだったんです」

誰もいない時にT橋を見るとすごく顔が大きい化け物が立っていて見つかると呪われるそうだ。

「実際にあの辺りって治安が悪くってしょちゅう事件が起きたりしてたんです。妖怪に見えたのはただの不審者だったと思うんです。でも中には本当に…」

ある日、隣の席の男の子がどんよりとしていた。

「かなり仲良かったんです。で、相談したいことがあると」

帰路、彼は昨日例の化け物と遭遇したことを話しだした。

塾の帰りで遅くなり、近道のT橋を渡ろうと橋の方を見た。

すると明らかに人ではない大きさの顔をした化け物がこちらを向いて立ってたそうだ。

恐怖のあまり走って逃げたがしっかり目があってしまった。

親に相談しても気のせいだろうで済まされてしまったが、呪われてたらどうしようとしきりに心配している。

彼は嘘をつくような人間ではないとQさんは知っていたのでただ励ますしかなかった。

「噂だから気にするなって言っといたんですけど」

しばらくして男の子が事故にあった。

赤信号を走って渡ってしまっていたそうで、車のブレーキが間に合わず即死だったそうだ。

運転手曰く、まるで何かに追われているかのようだったという。

「橋がボロボロだった時、墓石を使ってたと聞いたことがあるんです」

リニューアルされた橋では特にそういった噂を聞いてないのが救いです、とQさんは呟いた。

完

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