グローバリズム
「ここ10年ですっかりT市も国際都市に変わったわ」
Jさんはじみじみ呟いた。
「隣にえらく綺麗な外国の方が来たのよ〜」
パッと目を引くような色白でブルーネットヘアの女性だったという。
「その人だけしか暮らしてないと思うんだけど」
Jさんはベランダに置いたベンチで夜のんびりすることが日課だった。
「外の空気を吸いながら座っていると気持ちが落ち着いたのよ」
いつものようにベランダにいると隣のベランダから何かが音を立てて出て行く音が聞こえた。
「暗かったしよく分からなかったけど」
その後ベランダにいると鳥が飛び立つような音をよく聞くようになった。
ある日、ベランダの柵に寄りかかりながら友人と話してた。
「そしたら目の前をさっと飛んでいったのよ」
思わず叫び声を上げてしまった。
「振り返ると、コウモリっぽかったのよ」
それから物音を聞くことはなくなった。
代わりに夜、隣のドアから出かける音が聞こえてくるようになった。
「話としては終わりなんだけど、気になることがあってね」
最近、夜に隣の女性と外で鉢合わせしたそうだ。
「彼女物を落としたの。拾って渡してあげたのね」
たどたどしい言葉で笑顔で礼をいう彼女の口元をJさんは見逃さなかった。
「牙が生えてたのよ〜吸血鬼みたいな。コウモリもあの人のベランダからだったし、夜しか活動してないから間違いなく吸血鬼だね」
Jさんは続ける。
「吸血鬼って西洋の妖怪でしょ?お化けもグローバリズム化なのね」
それ以降特に何かあったわけではない。
完
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