人形
T市にはいくつかの姉妹都市がある。
Hさんは市役所の職員として、その姉妹都市の一つK市との交流を担当していた。
「イベント好きな都市だったり、海外の都市を担当している職員は大変そうです。僕のところは国内な上に出不精な都市なんで気楽なもんですよ」
そんな姉妹都市K市だが、最近珍しく交流イベントがあった。
「K市は人形作りが盛んな都市なんです。それで交流記念イベントで人形が贈られることになったんですけど」
もらった人形はどことなく不気味な気配がする人形だったそう。
「まあでも、そのまま市の郷土資料館で展示することが決まりました」
しばらく市役所内の倉庫で保管することとなった。
すると残業をしていたら倉庫から歌声が聞こえてくるだの、昼間も通りがかると倉庫から物音がするだの恐ろしい話が出てきた。
「みんな、僕に言ってきませんけど【あの人形のせい】って視線はひしひしと感じましたね」
責任を感じたHさんは意を決し、上司に人形をお祓いして良いか聞いたところあっさりOKが出た。
上司も薄気味悪さを感じていたらしい。
T市有数の仏閣であるT寺に祈祷してもらうこととなった。
「人形を見てすぐ住職様が【念がこもりすぎてるね】って言いましたよ」
祈祷を受けた後、怪奇現象はぴたりと止んだ。
後日、K市担当者に聞いたところ人形制作者はK市を代表する人形師だったそう。
高齢のため、最後の作品だとかなりの打ち込み具合だったらしい。
人形は郷土資料館で今日も静かに微笑んでいる。
完
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