24 桜の杜
昼間であれば施設内の駐車場を利用できる
この川は武蔵国と相模国の境とされた川で、
本松ダムの門を入り駐車場に車を止めて
「揚水式発電で、大松湖は上部調整池……下部調整池も見に行こう」
かくして、大松湖から枯葉平を抜けて下部調整池、
途中、もう少し先で右に曲がれば枯葉平に繋がる道になるというあたりで、
「そこの谷戸、大松城主たちが自害した場所だ。地図にある地名は
と、右を向いて隼人がぽつりと言った。左を向けば、まさしく大松城址のある場所だった。
多々井湖を
で、この大松ダム、国道になっていて渋滞が頻発する。多々井大橋とも呼ばれ、ダムの背を通行する。建設時の予測通行量を大きく上回ってしまったのだろうが、増幅工事なんか出来っこない。いくら渋滞しようと改善方法がない。湖を
多々井湖は大松湖と違い、
だが多々井湖の目的はそれだけではない。上水道、工業用水、そして治水の役目も果たす。上流には
「もういいや、帰ろう――幽霊ちゃんたちが水死したのはこっちの湖だ」
幽霊たちに
「お屋敷モアモアちゃんたちの出どころは、二つの湖かな。水没くらいじゃ、あんなふうにならないんだけど、同時に言い伝えとかも消えたってことだと思う」
「それで隼人、トプトプ本体は判ったのか?」
奏さんの質問に、
「うん、さっき、前を通った。向こうはこっちを見おろしてた」
隼人の言葉に奏さんは顔色を変え、
「でもね、囚われの乙女の正体がまだ判らない――奏ちゃん、ボクたちを『ハヤブサの目』に送ってから、ちょっと雲大寺に行ってくれる?
奏さんは雲大寺の住職と懇意にしている。もちろん住職、奏さんが妖怪と百も承知だ。人を
探偵事務所『ハヤブサの目』でも、物の怪が
雲大寺には、僕たちの仲間は奏さんしか入れない。隼人は異国の神だし、朔と満は
奏さんより一足先に事務所に帰ると隼人、例によってお
「ボクはね、バンちゃんが作ったご飯が食べたいのっ!」
と、くる。まぁ、時間も時間だし、夕飯を食べず行くわけにもいかない。いつもは隼人と二人なのだから僕が作っている訳で、今更、料理なんかしたくないなんて僕は言わない。冷蔵庫と相談の結果、僕はカレーを作ることにした。
「ジャガイモいっぱい、ニンジン少な目、玉ねぎは
出来上がるまで、いつもならリビングで
「コーンは冷凍があった、お肉は
隼人、僕のシャツを掴んだまま腕を伸ばし、その距離だけ遠ざかる。
ニンニク、ショウガの
ちなみに僕は吸血鬼だと言われているけど、太陽光にも十字架にも、もちろんニンニクにも影響されない。隼人は西洋の吸血鬼じゃないからだよ、と言うが、奏さんは隼人の血を吸ったからじゃないかと言い、本当のところは判らない。ま、理由はともあれ、そうなのだから仕方ない。あれこれ考えても疲れるだけで無駄というものだ。
ついでだから言っちゃうけれど、人狼たち、
別の鍋で卵を
ジャガイモとニンジンが柔らかく煮えたところに冷凍コーンをばらばらと投入する。
「ボクね、甘いカレーがいいの」
不安げに隼人が僕を見る。奏さんだとお構いなしに大人の辛いカレーだ。
「そうだね、甘口のルーがあるよ」
戸棚から市販のルーを取り出して、割り入れる。途端にカレーの匂いが部屋中に広がっていく。
「おっ、今夜はカレーか」
いいタイミングで奏さんが帰ってきた。
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