15 コスプレ万歳!
ところが予報は外れ、昼に止むはずの雨は降り続け翌日も雨だった。そんな雨の中、探偵事務所『ハヤブサの目』に早朝から来客があった。
客は
ちなみに妖怪なので、服も
「血吸い人のバン、久しいニャー」
奏さんにミルクを貰っていたようで、珠ちゃんは上機嫌だ。
「
「うん、まだ寝かせてあげたい」
「バンにゃんは相変わらず優しいニャ。ハにゃブサ、甘やかすと飛べなくなるニャ」
「えっ? マジで?」
「あったり前ニャ、嘘ニャ」
思わず僕は、ニャーニャー
「でもニャー、
「願い事? 神様なら、
「ニャ! 猫たる珠にゃんがお犬さまに願掛けなんかできるわけないニャ」
「そんなもんなんだ?」
「だいたいお犬さまはニャンコにいい顔しないニョ」
「ハヤブサならいいんだ?」
「ハにゃブサは鳥ニャ、鳥は猫を怖がるニャ」
「
「バン、細かいこと言うニャよ」
いつも通り珠ちゃんは、どこかズレてる。
「で、願い事って何なの?」
「それがニャー」
珠ちゃんが言うには、珠ちゃんが住んでいる山と峰続きの山の水が枯れていると言う事らしい。お陰で隣山から
「
「昨日から雨が降ってるから、元に戻るんじゃない?」
「うんニャ、ますます枯れるのニャ――んじゃ、
珠ちゃんが立ち上がる。見るとミルクを飲み干したようだ。
「
心得たもので奏さんは既にお土産を用意していた。見ると紙紐で閉じられた結構大きな紙箱、何が入っているんだろう? すごく気になる。
「んじゃ、帰るニャ。
上機嫌で珠ちゃんは帰っていった。
「お土産、何をあげたの?」
「なぁに、
なるほどね……
「で、こっちが隼人に食わせろと持ってきたプリン、1個。冷蔵庫に入れとくから、あとで隼人に食わせてやれ」
「プリン?」
「最近やっと、お金の使い方を覚えたらしくって使いたくて仕方ないらしい。コンビニで買い求めたと言っていたな」
「コンビニ、行けたんだ……って、行ったんだ? あの格好で!?」
驚く僕に奏さんが笑う。
「よくできたコスプレ、着ぐるみとしか思わないよ。いい時代になったねぇ」
本当に? 猫娘が出現、またも八王子、なんて騒ぎにならなきゃいいけどね。
時間を見るとまだ五時だ。寝直そうと隼人の部屋に向かうと
「バン、自分の部屋で寝たほうがいいぞ」
と、奏さんが言う。
「さっき見た様子なら、あれだけ
「奏さんには隼人が
「そうか、バンには見えてないか。
「そうなんだ?」
「俺には隼人が
いつだったか妖怪
「神の
そして思い出したように奏さんが言う。
「そういえばさ、バン、おまえが吸血鬼なのに太陽に影響されないのは、きっと隼人の血を取り込んだからなんじゃないかと俺は思うぞ。
それじゃ、オヤスミ、と奏さんは毛布をひっかぶってリビングのソファーに横になった。
奏さんの話を聞きながら、僕はいつも感じるフワッを思い出していた。隼人に触れる直前にいつも感じるフワッとしたあの感触、あれは隼人の羽毛なのか。でも、奏さんは『触れない』って言った。うん、そうだね、僕も触れない、感じるだけだ。
そういえば、本拠は朔たちのお屋敷にしようって言ってたのに、結局『ハヤブサの目』になっている。朔と隼人が怪我をしたから仕方ないか。向こうなら、奏さんも伸び伸びと横になれたのに、と思いながら僕は自分の部屋に戻った。
うん、戻ったのが間違いだった。数時間後、僕はハヤブサに襲撃される。目覚めた隼人がハヤブサ姿で有無を言わさず、僕を
「抱いててくれるって約束したじゃんか! バンちゃんの嘘つき! なんで何も言わずにいなくなっちゃうんだよっ!」
やっと隼人が収まった時には、僕が今度はボロボロになっていた。もっともひと撫でで塞がる傷ばかりだったけど。隼人も本気で僕を傷つけるつもりはなかったのだろう。ハヤブサのクチバシは、簡単に皮膚を食いちぎる。
それより隼人が元気になった。それが僕には嬉しかった。それに……
少し姿が見えないだけで、隼人は僕を必死で探す。僕は隼人に望まれている。間違いなく望まれている。僕に隼人が必要なように、隼人には僕が必要なんだ。
僕と隼人は互いに相手を求めている。求め、求められる、きっと、それこそが許しだ。必死で隼人を
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