第14話 王の暴挙



 次の日、俺はいつものように朝食を食べ終え、魔導院へと向かった。魔導院に着くと、今日は訓練場ではなく、王の執務室へ行くよう指示された。



 昨日の事件だろうな、と考えながら部屋の扉をノックし、中に入った。



 中にはエリオンと王が座っており、俺の姿を認めるなり、こちらに来るよう命じた。



「おはようございます。」



 そう挨拶すると、エリオンが「おはよう」と返し、椅子に腰掛けた。



 俺は王と向かい合う形で席に着いた。



 そして、王はおもむろに話を切り出した。



「先日の事件についてなんだが………… 実は昨夜、教団と呼ばれる組織から接触があった。


 彼らのトップは自らを『神』と名乗り、君と話がしたいと言ってきた。」



 その言葉を聞いた瞬間、俺は背筋が凍るのを感じた。



 俺は動揺を隠しつつ、王に問いかけた。



「それで、陛下はどのようなお話をされたのでしょうか?」



「もちろん断った。異世界人など存在するはずがない。そう一蹴したよ。だが、彼もなかなか引き下がろうとしなかった。そこで私は仕方なく彼にこう言った。もし、君の言う通り本当に神だというのならば、今すぐ私の目の前に現れることだ、とね。」



 そう言って王は笑みを浮かべた。



 俺は全身から冷や汗が流れるのを感じていた。



「結果はどうなったと思う? 彼は現れてなんと、君を連れてこい、と言い残して消えたんだよ。」



 王は笑いながら続けた。



「いやぁ、驚いたねぇ。私としても、まさか本当に現れるなんて思ってもなかったよ。君は何か知っているかい?」



 俺は思わず机を叩いた。



「ふざけるな!! あいつらは俺を殺しにきた。俺がこのままではまた誰かが傷つく!」



 俺が怒鳴ると、エリオンが立ち上がり、俺を宥めた。



「落ち着け。まだ話は終わっていない。」



 俺は荒い呼吸を繰り返しながら、エリオンを見た。


 エリオンは小さくため息をつくと、口を開いた。



「俺が聞いたのはそこまでだ。そこから先は直接会って話すそうだ。だから、俺はお前を呼び出してもらったんだ。」



 俺はエリオンの言葉を聞き、再び王の顔に目を向けた。


 王は真剣な表情で俺の目を見据えていた。


 そして、口を開き、衝撃的な言葉を告げた。



「来月、彼らと会うことにした。おそらく戦闘になるだろう。和己くん、君には申し訳ないが、同行してもらうことになるかもしれない。もちろん命の危険に晒されるようなことがあれば私たちが全力で守るつもりだ。どうか信じて欲しい。」




 信じられなかった。なぜわざわざ敵の思惑通りに自ら出向かなければならないのか。



 しかし、王は本気だった。冗談を言っているような様子ではない。



 俺は混乱しつつも、絞り出すようにして声を発した。



「いいでしょう。情報整理の時間としましょう」

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