第13話 異変



日が暮れる街の景色を楽しみつつ、目的もなくぶらついていると、不意に声をかけられた。



「異世界人は世界の異物!ここで死ね!!」そう言って男が剣を振り下ろしてきた。




俺は咄嵯の出来事に反応しきれず、思わず目を瞑ってしまった。



しかしその瞬間、どさり、と何かが倒れる音がした。



目を開けるとリズさんが倒れていた。胸から足にかけて大きく怪我をしている。そして男の方を見ると、胸から血を流して地面に横たわっていた。どうやら心臓を一突きされたようで、既に絶命していた。



状況を理解すると同時に全身が怒りで震え始めた。



俺の中で何かが変わった。いや、変わったというよりは戻ったと言うべきか。俺は男の持っていた剣を拾い上げ、男の死体に向けて思い切り投げつけた。



死体の胸に剣が深く刺さった。



それからのことはよく覚えていない。気がつけば俺はその場に座り込んでいた。



突然、背後に気配を感じたため振り返ると、そこにはエリオンがリザさんに回復魔法をかけていた。



彼女はどうやら気絶しているだけのようだ。



俺は咄嵯に言い訳を考えようとした。しかし、エリオンは何も言わず俺の肩に手を置いた。



俺は自分がしたことを思い出した。自分の中に渦巻いていた感情に身を任せてしまったことを悟った。俺はエリオンに謝ろうとした。しかし、それよりも早くエリオンが口を開いた。



そして一言、大丈夫か、と言った。



その後、俺を殺そうとした男は盗賊団の構成員であり、最近王都内で多発している殺人事件の犯人でもあったことがわかった。俺は衛兵に連行され、取り調べを受けた後、王国騎士団に引き渡された。



俺が罪に問われることはなかった。



しかし俺がしたことは許されざる行為だ。


俺はただ、自分の中の暗い衝動に飲み込まれないようにすることしかできなかった。










和己が連れて行かれた後もエリオンの表情は変わらなかった。


エリオンは静かに呟いた。



──お前なら乗り越えられると信じているよ。



──俺みたいにはならないでくれよな。



エリオンは魔導院の自分の部屋に戻るとベッドの上に寝転んだ。天井を見つめながら考え事をし始めた。



まずは、今回の件についてだ。



あの事件の後、俺はすぐに国王の元に赴き、事の顛末を説明した。



王はひどく驚いていたが、同時に納得してもいたようだった。



そして、今後このようなことが起こらないようにと、和己を秘密裏に保護する制度を作るように指示を出した。



また、この国では異世界人のことを公表しない方針が決まった。



次に、異世界人が暴走した場合の対応だ。



これは非常に難しい問題だったが、結論としては、一級魔道士が対処することになった。



そのため、今後はより一層の注意を払って生活することを義務付けられた。



明日は和己と一緒に王と緊急で面談を行う事になっている



エリオンはゆっくりと目を閉じた。




これからのことを考えつつ眠りについた。



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