第12話 急変

 更に一週間が経ち、俺が魔導院に来てから三ヶ月が経過したある日のことだった。



 訓練場で身体強化魔法を発動させていると、エリオンが近づいてきた。



「市街への外出が許可されたぞ。」そう告げられた。



 俺は一瞬何を言われたのか理解できなかった。国王のお願いにより王宮と隣接した魔導院の敷地外に出ることは固く禁じられていた。国外へ異世界人の存在を秘匿するために必要な措置だったらしい。



 しかし、それもようやく終わりを迎えたのだ。



 俺は嬉しさでいっぱいになった。そしてエリオンに礼を言い、早速出かけることにした。リズさんと共に魔導院の正門を抜け、しばらく歩くと王都に出た。街は活気に満ち溢れており、人々の表情も明るく見えた。



「まずは何がしたい?」



「えっと、武器屋に行きたいです!」



「わかりました。こちらになります」



 俺は王都内の大通りを歩いていく。すると、ある店の前で立ち止まった。看板には剣と盾の絵が描かれている。どうやらここのようだ。



 店内に入ると、そこにはたくさんの種類の武具が置かれていた。俺は興奮気味にそれらを眺めていた。



「お客様、何かお探しですか?」



 店員らしき女性が声をかけてきた。



「はい、刀という珍しいものを扱っていますか? できれば鞘がついているものが良いのですが」



 日本人の魂であるジャパニーズソード。刀。やはり一度は使ってみたい。それに、魔獣相手にはリーチが長いほうが有利だしな。



「カタナ……ですね。申し訳ありません。当店で扱っているものはロングソードのみとなっておりまして……」



 少し落胆したが、仕方ない。



「いえ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。では、これを見せて貰ってもよろしいでしょうか。」



 そう言って、俺はショートソードを手に取った。



「これは……、とても綺麗な造りをしておいでで……。素晴らしい出来栄えだと思います。私も初めて見ました。この剣はどこで作られたのでしょう。」



 俺は不思議に思い尋ねた。



「それは、この国では珍しいドワーフ族の職人が作ったものです。有名なダグラム工房ですね。彼の作る物はどれも一級品なのですが、この剣は特に美しい仕上がりになっていますね。」



 ドワーフ族、彼らは背が低く、髭面であり、屈強な肉体を持っていることで有名である。鍛冶を得意とし、優れた作品を作る。しかしこの国では亜人の人口が非常に低い。そのため、ドワーフ製の彼の作品は希少価値が高く、高値で取引されている。



「金貨500枚!?!?」


 俺は驚愕した。こんな小さな剣一本にそれほどの価値と情熱が掛けられているということだ。



「はい、その値段でも売れるほどの逸品となっています。」



「そうなんですか……」



 非常に丁寧な手つきで元の場所に戻す。



 その後適当に防具や日用品を見て楽しんだ。リズさんと笑いながら一日を過ごせた













 日が暮れる街の景色を楽しみつつ、目的もなくぶらついていると、不意に声をかけられた。













「異世界人は世界の異物!ここで死ね!!」そう言って男が剣を振り下ろしてきた。

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