第11話 バックグラウンド

 さて、俺の話をしよう。



 俺が何故文系にも関わらず理系的な知識を持っているのかと言うと、それは、高校二年までは理系として生活していたからだ。



 中学までは勉強もそれなりにでき、クラスでもトップの成績を維持していたため、何も考えず理系に進学していた。



 一年で物理基礎と生物基礎を学び、二年生で化学基礎、生物を勉強していた。



 部活も科学部に所属しており、そこで俺は物質の工業的生成方法を勉強していた。



 しかし何故文系に進んだのか、理由は簡単だ。経済学に強い興味を持ったからだ。アダム・スミスの国富論を読んだときに衝撃を受けたのだ。今まで漠然と考えていたことが全て覆され、自分の中の固定観念を壊された。富は特権階級はなく、諸階層の人々にとっての「生活の必需品と便益品」を増すことであるという考えは俺に革命をもたらした



 国富論での



「外国産業よりも国内の産業活動を維持するのは、ただ自分自身の安全を思ってのことである。そして、生産物が最大の価値をもつように産業を運営するのは自分自身の利得のためなのである……」



「だが、こうすることによって、かれは、他の多くの場合と同じく、この場合にも見えざる手に導かれて、みずからは意図してもいなかった目的を促進することになる」



 という世間一般では「利己心」という一般的には悪徳と思われるものが、実は社会全体の利益につながっているという考え方が、俺の心に響いた。この考え方は俺の人生観を大きく変えた。それからは経済について猛烈に学び始めた。特に国際貿易や投資、金融などに興味があった。



 しかし、残念なことに高校の授業だけでは物足りなかった為、様々な書籍を読み漁った。マルクスの資本論を始め、ケインズ、ハイエク、そしてピケティなどの本を読んでいった。



 受験期はもう必死に勉強した平日8時間、休日12時間の学習時間をひたすらに繰り返し、合格した。



 しかし異世界転移という有様である。



 この世界は非常に歪だ。1900年代頃の科学技術があると思えば医療技術は魔法に頼り切っていたりする。医療に関しては現代日本より遥かに遅れていると言っていいだろう。近代医学は産業革命以降に発達したものだしな。



 この世界の医療技術が中世レベルならまだ良かったのだが、魔法が発展しているせいかかなり進んでいるようだ。魔法による回復魔法があるために外科手術などはほとんど発達していない。



 俺のいた科学部は異常な人間しか集まっていなかったのだが、外科手術の練習をしていた人がいた。そいつに練習に付き合わされて手伝わされていた。まあ、人体の構造や機能などを理解していたから手伝えることは手伝えたが。



 魔法を勉強すると同時に、軍事利用しにくい技術は出来る限り伝えたいと思う。


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主人公視点で話は進みますが、ちゃんと色んな人物の思惑が絡んできます。

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