第2話 謁見
「─ますか!──ますか!!聞こえますか」
鈴の音がなるような心地良い声に引かれるように目を開ける。
「ここは、?」
まだ動きの悪い脳を稼働させ周囲を把握する。
謁見の間だろうか、豪華な装飾が施された壁や天井を見るにかなり地位のある人物が作らせたものだろう。日の入りくらいからして大体4時ごろだろうか。
先ほど声のした方を向くと途轍もない美少女がいた。
形容するなら磁器のような白い肌、西洋系の顔立ち、身長は自分の目線から推測するに160センチほどだろうか。おそらく15,16歳ほどだと思われる。
そして上等な作りをした服、シンプルながらも装飾が丁寧に施され一着かうのにいくら掛かるのだろうか。右手の人差し指には銀と思われる指輪が嵌められている。
先ほどから重圧を放っている初老の人物が段差の上の椅子に座っている。そばには護衛と見られる人が二人ほど控えている。
「私の名はソフィア、姓はアスタルテ。本当にごめんなさい。魔道院で研究していた異世界との交流実験によってあなたはこちらの世界に転移されたの、、転移されたあなたは次元間の移動により8時間ほど気を失っていたのよ。一時は死にかけてたわ。あなた。おそらく私の魔法によって回復し続けなければすぐに死んでいたでしょうね。混乱しているでしょうけど意識が戻ったから説明をしたいと思うの。それではお父様に代わるわね。」
すると、横で重圧を放っていた男が口をあけた。
「うむ。私がアスタルテ王国国王のシルベスター・アスタルテだ。異世界から来た男よ。我が王国魔道院のものが本当に申し訳ない。」
そう言い終わるとこの国の国王と名乗る男が頭を下げた。
「あ、頭を上げてください。一国の王がこんな平凡な大学生に頭を下げないでください」
事が急に進むので動揺しつつ王様の謝罪を受け取った。
「お詫びになんだが、この王城に好きなだけ住んでもらって構わない。」
「有用性がなければ即処刑とかは…」
「いや、その心配はない。しかし異世界について教えて欲しい。異世界はどのような場所でどのような暮らしをしているのかが気になる。もちろん無料でとは言わない。対価に金貨10枚を国庫から支給しよう。また良からぬことを考える者も現れるかもしれない。そんな輩から守るために国賓扱いにさせてもらう。ああ世話と護衛も出来る者を宛がおう。これで手出しはされまい。またお主を転移させた者の処罰はこちらで決めさせてもらう。」
流石一国の王だ。話が速い。怖い人かと思ったが意外と好意的だ。
「お心遣い感謝します」
「いや構わない。こちらに非があるのでな。他になにか必要なことがあれば申してくれ。」
ふと疑問に思った事を口に出す
「先ほどから気になっていたんですけど何故話が通じているんでしょうか。そちらが話しているのは別の言語ですが内容が理解できていて、私が喋っている日本語がわかるのでしょうか」
王はしばらく黙り込む。1分ほど唸ったあと口を開いた。
「そうか。他の世界では別の言語間で言葉が通じないのか。申し訳ない説明しよう。」
といって王は語りだす。内容をまとめるとこうだ
この世界の仕組みとして日本語で名づけるなら”翻訳媒体言語”というものが存在する。王の説明が難しかったので分かりやすく自分で解釈すると、AI翻訳機が頭にインストールされているようなものだ。つまり脳内で他の言語の意味が母国語に自動で翻訳される。日本語と王国語で会話するという違和感が生まれていたのだ。
もう一つ気になった言葉があったので聞いてみる。
「これは国家秘密かもしれないのですが、先ほどから話に上がっていた魔道院というものに伺いたいです。私の世界では魔法という存在がなかったので魔法に触れてみたいです。」
「問題ない。なるべく早く便宜を図ろう。怪我は完全に治したがその影響でお腹が空いただろう。急で済まないが着替えや寝床の確認が済んだら数刻後に晩餐に参加してもらいたい。まだ無理そうなら断わってくれても構わない。ああ、聞き忘れていた。お主の名前は何という。」
「いえ、晩餐には出席したいと思います。えー大体7時頃ですね。わかりました。
私の名前は榊 和己といいます。」
和己が礼をしたあと世話係に案内され謁見の間から退出する。
「行ったか」
「はい。」
「王女殿下。影武者の私が言うのも何ですが、本当にこれでいいんでしょうか」
「父上の考えを理解しているお前の方針だ。何も問題ない。護衛。先ほどの謁見は父上と共有されているか」
「はっ」
護衛の声と同時に王座の後ろの隠しドアが開く。影武者とそっくりな男。本物の国王が登場した
「いや異世界人とあって身構えていたが案外平凡そうじゃないか。それと“幻影”よ。いつもながら良い仕事ぶりだ。今回は十分な成果だよ。異世界人とあれば未知の技術も知れるだろう。」
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謁見の間:
王宮内にある施設の一つ。
王族の権威を象徴する部屋である。
隠し扉があるがどこへ繋がるかは王族を始めとした極少数しかしられていない
莫大な資金によって作られた。
しかし意外と広さはない。
幻影:
地位の高い人物、特に王となれば影武者が必要となる。
幻影はアスタルテ王国国王、シルベスター・アスタルテ唯一の影武者である
顔から声、仕草、思考まで完全に国王の写し鏡と言っていい。
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