第15話 幕間 移動 ~アントニオ
アイリス・ミラーはアントニオ・ベラスケスの運転するトラックに揺られながら、助手席で黙っていた。アイリスは、包帯を巻いてある右手をじっと見ていた。
アイリスは彼に言った。
「なぜ、私を乗せたの?」
前を向いたまま、アントニオは答えた。
「別に、危険は無さそうだと思ったからさ。だけど、手を貸そうとしただけで、あんな怒る事ないのになあ。今時は、ああいうのも、セクハラになるのかね?」
「私は……危険だから」
「あーはっはっは! ただの疲れたねえちゃんにしか見えないけどねえ。今は、男女平等らしくて、凶悪なねえちゃんもいるらしいけどねえ。若くて綺麗なねえちゃんが、拳銃強盗やって終身刑になったりさあ!」
アイリスはびくっとした。デソーサの家から持ってきた拳銃をナップザックに入れてある。デソーサはいくつも拳銃を所持していた。
いざというときは、自分を守らなくてはならない。若い女が一人で、しかもヒッチハイクで旅をするというのは、そういうことだ。
「お、ほんとに、持ってるのかい? くれぐれも、使わないでくれよー!」
この男は、冗談で言っているのか、本気で言っているのか。
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