アリソン六歳編
アリソン五歳の旅路を振り返る
辺境の貧乏男爵家の次女に生まれたアリソン・ウッドゲートは、王国の全ての民が五歳になると魔法の才能を調べる「星片の儀」に臨み、その底なしの魔力により儀式用の水晶を爆砕してしまう。
それと同時に、五歳児のアリソンの脳裏には、前世の記憶が蘇る。
彼女の前世は、ロッククライミング中に事故で命を落とした、現代の女子大生であった。
困惑するアリソンが魔力を抑える強力な腕輪を付けたまま谷の館へ戻ると、男爵家に仕えるフランシスという魔法使いを師匠として、魔力の制御をする修行を行うようになった。
男爵家は南に広がる王都直轄の田園地帯を、北方の森の魔物から守る重要な任務を与えられている。
家臣や傭兵にも、腕に覚えのある者が多い。その中でも特に優秀なのが、フランシスという二十代後半に差し掛かった、女性魔法使いだった。
そんなある日、北の森で魔物の暴走が起き、谷も魔物に襲われる。フランシスと共に逃げながら、アリソンはその原因が、封印されていた古代魔獣の復活であることを知る。
館からの地下通路を逃げていた二人が魔物に襲われたとき、アリソンの魔法が発動し、森の中の全ての魔物が時を止めたように、動かなくなった。
それにより、古代魔獣と戦っていた男爵一行も勝利を収め、「水晶砕きのアリソン」の名は王宮にまで伝わる。
古代魔獣討伐の褒賞を与えるとの名目で、父の男爵と共に王宮へ呼ばれたアリソンは、魔法の師匠兼世話係のフランシスを伴い、王都への旅に出る。
谷の教会でアリソンの守護精霊となっていた月の精霊ルーナの力で、暴走しがちなアリソンの魔力を制御できるはずだった。
だが、道中でも魔力は度々暴走し、精霊ルーナは役に立たず、危機に陥る。
何とか無事に王都へ辿り着いたアリソンだが、王宮では褒賞の他に王子との婚約を迫られ、再び時を止める魔法が発動し、王宮内にいる人物の動きを止めた。
月の精霊ルーナが王に直接話したことにより、王はアリソンを古の賢者の再来と認め、特別な魔法使いにのみ与える爵位を授与し、王国内での自由を保障した。
アリソンはフランシスを伴い、二人で王宮を脱出し、王都の教会に匿われた。
アリソンは百五十年前に政争に巻き込まれ謀殺された賢者と同じく、自分がエルフではないかとの疑惑を抱き、王国の西方にあるエルフの里を目指すことに決める。
教会の雇ったプリスカという若い女性の冒険者を道案内として、フランシスと三人でエルフの里を目指す。
王都を離れる前に立ち寄った魔術師協会では、会長のケーヒル伯爵が待っていた。
王家と教会は、密かにアリソン様の監視を続けるでしょう、と告げられる。
王の与えた通行証は、諸刃の剣だ。使えば居場所を知られることになる。
伯爵の助力により、三人は王都の南にあるケーヒル伯爵領を過ぎた場所で一度別れ、途中アリソンは第二の封印魔獣との戦いも切り抜けて、無事に追跡者の目から逃れた。
その後エルフの森の境界で、第三の魔獣の封印を解こうとする勢力をフランシスとプリスカの二人が撃退し、三人は無事にエルフの里へ辿り着く。
これにより、月の精霊ルーナとエルフの里にいた太陽の精霊アンナは千年の時を超えて一体となり、光と闇の精霊ルアンナへと戻る。
ルアンナの力により前世と同じ二十歳の体に変化したアリソンは、暴走する魔法の制御を第一として、修行に励むのだった。
エルフの里では百歳以下の若いエルフとの共同生活を送ることになり、アリソンの望むエコで穏やかなスローライフが待っていた。
しかし、同居するエルフの三人娘は、エルフの里を出て人の暮らす街へ出るための経験を欲している。
アラサーのフランシスも、長命で無欲なエルフとの婚活に見切りをつけ、近隣の獣人の村へ行きたいと願っている。
アリソンの望む穏やかな暮らしは長く続かず、北方の獣人の村やドワーフの街を見物して回る間に、アリソンの故郷である北の谷が何者かの襲撃を受けていた。
仲間と別れ、単独で故郷を目指すアリソン。
故郷の谷の館は教会の一勢力に占拠され、新たな魔獣の封印が解かれる寸前の事態となっていた。
谷の館から更に北方にある隠し金山へと偶然辿り着いたアリソンは、それが男爵領の守る王国の秘密であることを知る。
五歳の体に戻ったアリソンは単身谷へ戻り、男爵領を占拠する謎の組織と戦う中で、遂に第三の魔獣の封印が解かれてしまう。
雪深い森の中での戦いに苦戦するアリソンに、南の森で別れた仲間が助太刀に現れる。
魔獣を倒し、アリソンは五歳の娘として、家族とひと時の安らかな暮らしを満喫するのだった。
だが、封印された魔獣を復活させようという邪宗の本当の標的は、賢者の再来と言われるアリソンだった。このまま谷に長く滞在することは、許されない。
故郷を守るためにも、春になれば、再び新たな旅に出ることになるのだろう。
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