《一部 協奏曲(コンチェルト)第666番~悪魔~》・1

 軍事を中心とする帝国から出発する原子力船に忍び込み、港で蒸気船に乗り換えた。更に次の港で帆船に乗り換えて、彼らはここに着いた。

 仰々しくも「ヘブン」という名のついた港町に。

 

まだ涼しい雨の月の早朝。曇り空が今にも泣きだしそうな顔をして出迎えた。灰色の空の下、暗く古びた町が余計に暗く見えた。どこもかしこもレンガ造りの家々、石畳の通りが趣を添える。

 ここで降りたのは、少しの荷物と二つの影。

 影の一つは、ローブを着た青年・フラウ。隠れる為にワザとみすぼらしい恰好をしていた。一六歳という若さで、帝国の機械兵の製造に携わり成功を収めたが、自分の発明が人殺しに使われるのが嫌で、ここ「ヘブン」へ逃げてきたのだ。ローブからは顔がほとんど見えず、黒い付け髭だけが覗いていた。彼はローブのフードを外して、「ふはあ」と欠伸をした。彼の顔は少し幼げで、背も平均的な十六歳の身長を少し下回っている。彼の髪は燃えるように紅い。そんな彼はわざとらしい付け髭を外して、海へと投げ捨てた。

 

 もう一つの影は同じようにローブを着ているが、動くときに人からはしない金属音がする。彼はフラウの作ったロボット・ゲト。フラウの身の回りの世話をし、戦いを嫌う。フラウの為だけのロボットである。彼はフラウよりも頭一つ分大きい。ゲトはその白金色の金属でできた身体をローブで隠している。彼はフードを金属の五本指を器用に操り、上手に掴んで顔を出した。その目は黒いカメラが二つ覗いていて、白金色したカバーで皮膚のように覆われている。口はカパカパと開いて喋る。


「ゲト。ここは良さそうな町だ」

「『マスター』は、あの帝国以外ならどこでもいいのでしょう?」


 口の奥のスピーカーから流れ出る合成音声。

 人間らしからぬビリビリと割れるような声。


「それはそうだよ。さあ、役場へ行こう。ボクは疲れたよ。体も痛い」


 港のすぐ前が魚を水揚げする魚市場になっていて、その裏が役場だった。役場は赤いレンガでできていたが、そのレンガも今にも崩れそうなほどに痛み、色は褪せていた。働いているのは定年前の老人だらけであったし、その顔にはやる気が感じられない。

 受付の中年のくたびれた女性に「ここに住みたい」とフラウは言うと、驚いた顔をして聞きかえした。そして、それが本当だとわかると、席を立ちロケットのように走って住民登録の紙を取ってきた。そして、住むには家も必要だろうということで、それも世話をしてくれるというのだった。

 それはフラウにとって喜ばしいことであると同時に、それだけこの町が寂れて人がいないということを示していた。

 

 簡単すぎる手続きをすると、違う係の男性に交代した。彼は骨と皮しかないように痩せており、くたびれ切ったように暗い顔をしていた。彼は家に案内してくれるという。役場を辞して、その男に付いていく。彼は何度も「本当にここに住むのかい」としつこいくらいに質問してくる。何度も本当ですとうんざりするほど言い続けなければならないフラウはあきれ顔。本当ですという度に彼の背筋は段々と伸びていく。二十三回目ほどで信用したらしく、彼は「特別に」と、とてもいい笑顔で言うと素晴らしい家を貸してくれた。


 二階建て、地下室付き、リビングもキッチンもダイニングも揃い、他にも部屋が五部屋ほどある。フラウとゲトだけでは広すぎるくらいの家だった。問題は床に足跡がつくほどほこりが降り積もり、まるで薄く積った雪のよう。物置と地下室は害虫・害獣の巣窟となり、ひとたび扉を開けるとそれらが足の上を逃げていくのだった。フラウは悲鳴を上げたのは言うまでもない。さらにクモの巣の張っていない部屋がないので、案内され終わるころには三人とも雲の巣とほこりにまみれていた。

 フラウはかなり住む気をなくした。

 役場のおじさんは、役場の人を全員呼んでくると言い、戻っていった。

 

「ひどい家だ」

 彼はゲホゲホとほこりに咽ながら言った。


「これはどれくらい住んでないんだろうか」

「もう寂れつくした町ですから、何十年と住んでいなくてもおかしくはないですね」


 ここはかつて栄華を極めた科学と医療の町であり、天界と地獄の使者を住まわせた「特区」であった町である。

「特区」というのは天界と地獄からの使者を一時的に住まわせるというもので、天使と悪魔、それに地上との架け橋になればいいということで設けられたものである。特区内では平和的に共存することがルールであり、それを守ると罰則もあった。それゆえに天使と悪魔はこの中では、平和的に暮らすことを守っていた。


 天使からは薬と医療技術を学んだ。悪魔からは機械技術と科学を学んだ。それは世界へと広まり、地上は発展した。帝国はほとんどが悪魔による技術を発展させたもので出来ている。


 しかし、特区という括りはいつからか薄れ、技術は世界へと広まりつくして、「ヘブン」は特別な町ではなくなるのだった。そうなると人は離れて行き、今ではモーター搭載型帆船での漁業で何とか成り立っている町となっている。


「ですが、だからこそ逃げるのはふさわしい町です」

「ここなら見付からないだろう」

「ええ、見付からないでしょう」

 彼らは遠く西の方を見た。曇り空のその先を。

 

 彼は役場の職員、十二人を連れてきて掃除をした。ゲトは「手伝います」とローブを脱いで言った。彼らは珍しい物を見たような顔で、「へー」とか「ほー」とか言った感嘆の声を上げ、結局「ロボット様にそういうことはさせられない」と言い、ゲトを良く拭いた椅子に座らせた。掃除と駆除を全員で終わらせると、役場へダラダラと戻っていった。人が来ない役場で座っているよりも、体を動かしたかったのだろう。



         * * *


 ロボットは人の為に。


 帝国は、そういう理念の元で生きている。ロボットは人に尽くして当たり前、ロボットは人の下で働いて当たり前、ロボットは人に支配されて当たり前の世界。だからロボットは戦いの兵器になり、ただの攻撃する手段になってしまった。

 フラウの発明、「HT」。人工知能の「AI」とは少し違う。「AI」を脳とするなら、「HT」はココロだ。それは感情を持たせる機械の心臓。もちろんゲトにも入っている。しかし帝国はそれをロボットに入れることを中止、それを破ると罰せられた。ロボットは人ではない、ゆえに感情は要らない。ロボットは忠実な下僕であればいいというのだった。


 フラウ自身は罰を受けなかったが、兵器となるロボットを永遠に製造し続けるという契約をさせられてしまっていた。

 だから、逃げた。

 嫌になって、逃げた。

 ロボットは兵器じゃない。友達になり得る、家族になり得る、人になり得る、そういう存在であるべきなんだ。それがフラウの主張できない主張だった。そんなことを言えば、帝国に殺されていただろう。それが嫌で逃げたのだ。友達であり、仲間であり、家族であったゲトを連れて。


 そして、機械の少ない遠い町に、帝国の支配の及ばない町に逃げてきた。

 辿り着いたのは、ここ「ヘブン」。ここが天国であればいいなと思って。

 フラウは掃除したばかりの、二階の部屋でローブを脱いで着替えた。軍服の下に来ていた白いシャツと、赤い下に履いていたズボン。持って来られた荷物は少ない。着替えもほとんどない。明日は町に買い物に行かねばなと思った。

 

 

      * * *

 

 次の日は雨。サラサラと柔らかな水滴が空から降ってくる。気にならないほどの雨だった。傘も要らないだろう。ゲトは防水済(ぼうすいず)みだから、それも問題はない。

 雨は嫌いじゃない。

 それは恵みである。かの帝国は、雨が嫌いだった。機械で埋め尽くされたその国は、雨雲を消して、領地の上に雨を降らすことをしなかったのだ。機械が濡れて、ショートしたり、錆びたりすることを嫌がったからだ。雨雲は領地の外で雨を降らせて消す。その水は地中にしみ込ませて地下水にして、国内で吸い上げる。それが帝国のライフラインとなっていた。

 フラウは帝国が嫌う雨が好きだ。帝国が嫌うから、余計に好きだ。

 雨の匂い。雨の冷たさ。濡れる髪。濡れる服。降り終えた後の虚しさ。それらが彼は好きだった。雨の日は楽しかった。戦いがない。幸せだった。

 雨の日には、彼は外に出る。喜んで人のまばらな町に飛び出すのだ。


 彼らは買い物に出かけた。服と食料、必要な物を買いそろえるために。町は小さな商店がポツリポツリと開いているだけの寂しいものだったが、それでも必要な物を揃えることはできた。店の人々は、ゲトを見ると見たことのないものに驚いたり怯えたりする。それを説明して回るのは大変だったが、それは家族を紹介しているようで面白かった。そして、フラウが機械に詳(くわ)しいことが分かると、彼に家にあるわずかな機械類の調子を見てもらいたいと言うのだった。

 それをフラウは造作もなく直すと、店の売り物を少しサービスしてくれるのだった。


 馴染んでいるような、そんな気がした。それがたとえ優しさじゃなくとも、ただ恩を返すだけの行為だとしても、彼は嬉しかった。鋼鉄ように凍りついたココロをもった帝国の人間とは違うのが、フラウのココロを少し溶かしてくれた。

 帰り道。雨は止んでいた。荷物は二人では持てないほどになり、最後に寄った家具屋の主人は荷車を貸してくれた。それに荷物を積み、ゲトが引っ張り、フラウが押した。


 どうしても疲れて、町の真ん中のカフェで一休みをする。そこは美しいハープの曲が流れる静かなカフェだった。コーヒーの香りとハープの旋律が、外の通りにまで広がっている。

 木を基調とした静かな造り。サイフォンの水を沸騰させるかすかな音。それによって立ち昇る香ばしい香り。何より目を引いたのは、カフェの真ん中で、大きなハープを弾く老人だった。

 ちらほらといる人々の間をすり抜けて、フラウは老人の近くに座った。老人はきれいな銀色の髪をし、着崩したスーツでハープを弾く。レンズの小さな眼鏡を鼻に乗せていた。ヤセ形で、手足も長い。ハープはゲトの身長と同じくらいの大きな物であったが、老人はそれに負けない迫力で弦を弾いていく。

 聞き惚れる。そういう音だった。柔らかく温かいコットンに包まれるような、心地いい春の日差しを浴びているような、雲のベッドに寝ているような感覚。それは音楽に恋をするようだ。この音楽の一音一音が語りかける、愛をささやく。フラウはその音に聞き入り、そして、その最後の音を怖がっている。何だか落ち付かなくて、コーヒーを頼んだ。音楽は流れ続ける。

 彼が最後の音を、ポンと弾く。

 まるで恋の終わりのように切ない一音。

 でも、それを聞き終えると感動が迫る。素晴らしい音楽だと思えのだ。


 それと同時にコーヒーが届いた。濃いブラウンの液体は、香ばしい豆の香りと白い湯気を立ち昇らせている。フラウは拍手をしたが、町の人は誰もしない。彼の演奏は素晴らしかったが、町の人は聞きなれているのだろう。

 彼は少し寂しくなった。理解されないとは老人も悲しいのではないかと。

 老人はハープから離れて、フラウの座るテーブルに座った。顔はニコニコと笑っている。座っている時には分からなかったが、かなり背の高い老人だった。


「お前さんだな、昨日引っ越してきたとかいう変わり者は」

「はい。そうですけど、変わり者は酷(ひど)いですね」

「変わり者だよ。私の演奏に手など叩いて」

「でも、素晴らしい演奏でした」


 彼は皺の入った顔をクシャクシャにするように笑った。

 そして、握手を求めてきたので、フラウも手を出した。

 彼はとてもうれしそうだった。


「ここの者は、私の音楽を当たり前だと思っている。だから、拍手は嬉しかったよ。私は音楽とおしゃべりだけは大好きなんだよ」

「そうなんですか」

「老人の戯言と思わないでくれよ。好きな物は好きなんだよ。君の名は?」

「フラウです」

「私はジェイスだ。フラウ、君が一番好きな物は?」

「一番ですか? 友達のゲトです」


 フラウは隣のロボットを紹介した。白金色した友達を。

 ニコッと笑って、彼は言う。


「好きな物があるのは、いいことだろ?」

「そうです。幸せです」

「ああ、そうだろ? だから、私にも好きなことをさせてくれんか。何でも、話してやろう。フラウ、お前はなんでこの町に来たんだ?」

「ボクはただ――、でも名前がキレイだなと思ったんですよ」

「『ヘブン』か。大袈裟だというものはいるよ。でも、しっかりと由来があるんだ。由来は二つだ。一つは、この町には昔から天使や悪魔、それに神がすんでいたっていうところからきている」

「そうみたいですね」


 彼は昔を懐かしむように遠い目をして、


「今ではほとんどいないが、昔は大勢(おおぜい)の天使が住んでおった。天使が羽根を隠さずに住める唯一の町でもあったからな」と言う。

「なんだか想像できません」

「天使は羽根を隠さず、幸せを振りまいて過ごした。悪魔は人に快楽と知恵を教えた。神は占いと癒しを与えて、教会に住まわれた。人々は幸せと知恵と癒しを得た。もう過去の話だ。むかし話さ。むかしむかし、あるところに『天使の口づけ』の口づけをうけたものがいました。そんな話もあるくらいのな」

「それはどんな話なんですか?」

「天使のファーストキスには永遠なる守護能力がある。それを受けると天使の加護を受けられるらしい。詳しくは知らないさ」


 そう言って、ジェイスは店の正面の大きな窓から、向かいの花屋を見つめた。お婆さんが一人と、若い女の子が働いているのが見えていた。可愛い女の子だ。それをフラウも見つめているとわかると。


「ミカルだよ。とてもいい子だ」

「よく見えませんが、可愛い子ですね」

「手を出さん方がいいぞ」

「手なんて出しません」

「おや、どうかね」

「どうなるんです? 何かひどいことに?」

「多分痛い目を見るだろうな。おっと、話がそれたな。もう一つの理由はな、『天使の梯子』だ」

「それって、自然現象ですよね」

「おお、知っているか。そうだ、雲の切れ間から太陽の光が筋のように垂れる、それが『天使の梯子』だ。本当に天使が降臨、昇天する時も見られるらしいぞ。ここはそれの名所なんだ」

「どうして名所なんです」

「ここはどうも曇りや雨の天気が多い。晴れるときが逆に珍しいくらいだ。雲は年中厚く空を覆う、そんな気候だから『天使の梯子』が綺麗に見えるんだよ」

「すごいですね」

「まだまだ話したいが、そろそろハープを弾かんと店のマスターに怒られる。ノルマがあるんだ。また話でも音楽でも聞きに来ておくれ」


 彼はハープのところに戻ると、まるでさっきまでのおしゃべりの続きのようにつらつらと音楽を奏でていく。そうして、店はまた落ちつきを取り戻す。

 軽快な音楽。

 悲しい音楽。

 交互に奏でられる彼のハープ。

 美味しいコーヒーを一杯飲み、極上のハープを聞き、フラウとゲトは店を出た。コーヒーを一杯にしては、贅沢な時間を過ごしてしまったと思う。申し訳ないほど、代金は安かった。せめて、チップを払うべきだっただろうかと後悔した。ジェイスの音楽には、価値があると思う。それをお金で済ますべきではないのかもしれないが、それに値するものが他に思いつかなかった。

 運良く雨は降らず荷物が濡れることはなかったし、盗られることもなかった。ここは平和だな、改めてフラウは実感した。向かいの花屋さんの娘さんの姿を良く見ようと思ったが、彼女は店に引っ込んでしまっていた。


 家に帰り、ゲトと共に荷物を片付ける。終わるとゲトは荷車を返しに行くと、家を出た。フラウは地下室でもってきた荷物を広げた。そこには機械の部品が乱雑に入っていた。これでゲトの友達を作ろう。フラウには理想がある。機械は友達、家族、兄弟、親友になるべきだ。その理想を、帝国にしてみれば妄言を、フラウは全力で叶えたい。ここでは多くのロボットは作れない。

 でも、ゲトに友達がいればと思った。

 フラウは人間だ。ゲトはロボットだ。寿命のあるなしが否応なく存在する。フラウが死ねば、彼は一人で生きるだろう、せめて、彼と一緒に生きてくれる存在が欲しい。


 小型の「HT」もある。小さなロボットなら、これで足りるだろう。彼は一生懸命に組み立てを始めた。

 もって来ることの出来た荷物は少ない。小さなロボットしか造れないのは目に見えて分かった。図面は引かず、使える部品だけを組み合わせていく。そうして造って間違ったことはない。出来る限り溶接することのないように造られた『ブロック式』という技術は、こうしたロボット作りに大きな影響を与えた。もちろんフラウの造り出したものだ。子どものブロックの玩具のように組み合わせロボットを作りだす。そういう技術だ。

 組み立ては簡単。

 組み合わせも自由自在。それに小型の「HT」を組み合わせる。それだけだ。

 ゲトが帰る前に組み立ては終わった。人型には出来なかったが、箱型のロボットが出来あがった。見かけは白い箱だ。下に取り付けたタイヤで、走るように出来ている。手はなく、箱の上部には目となるカメラと口となるスピーカーが付いている。ゲトと話ができるようにと考えたのだ。


 期待とゲトの喜ぶ顔を想像しながら、フラウは彼のスイッチに手を掛けた。初めてゲトを作った時も、こんなように手に汗をかきながら、怖々スイッチを押したのを覚えている。スイッチは簡単にパチリと入る、電灯のスイッチとほぼ同じ物だ。その差異が恐ろしいのだ。怖々と迷いながらスイッチを入れたところで、感覚は一瞬だから。震える手で電源に手を掛けて、目をギュッと瞑り、パチリ、電源を入れてみる。恐る恐る目を開くが、彼はそのままだった。新たなロボット・クルスは動かない。

 どこも壊れてはいないはずだが、彼はまったく動く気配を見せない。

 失敗だ。

 彼は悲しくなった。

 自分のことではなく、ゲトのことを思った。後々彼を悲しませるのではないか。それとも自分がいなくなれば、彼は自分で自分を壊すのではないかと思うのだ。彼は友達だ。そんな未来にはしたくない。でも、これが現実だ。

 前にもこういうことがあった。「HT」によるものらしい。頭脳(AI)ではないココロである「HT」は、合うと合わないがある。例えば、フラウのココロと、ジェイスのココロはまったく違う物である。では、それを交換したらどうか。それは形にまったくハマらない別物だから、二つの身体は機能しなくなるだろう。

 それは「HT」を基準とした人の心のヘリクツになってしまうのだが。「HT」で実験した結果は、ほぼ100パーセントが動かなくなる。ココロゆえの難しさである。


 ココロがあるから、ロボットに個性や意思が生まれる。だが、それゆえに身体とココロが合致しなければならない。彼は頭を抱えた。ココロとはなんて難しいんだろうと。

ガチャリとドアが開く音がして、ゲトが帰ってきた音がした。

慌てて片付け、クルスには布をかぶせる。

ゲトには秘密にしておきたいのだ。

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