母の日 デート

GW明け。

母の日と言う年中行事を明後日に控え、林凌平と幼馴染の出原真朝は高校の創立記念日を利用して、買い物に行くことになった。

平日の駅、改札前で待ち合わせることに。

普段は通勤ラッシュに揉みくちゃにされているから、今日は随分と駅内が閑散として見える。

遠くから、ワンピース姿の彼女が髪を風に靡かせやってくるのが見えた。


■■■■■

「りょーへー。おはよう!」

私は改札前でちらちらと腕時計とにらめっこしている凌平を見つけ、駆け寄った。

凌平は私を見つけ『おはよう』と呟いて、顔を反らした。

ん?今日、凌平の顔、赤い?気のせい?なんで顔背けたんだろう?

「最近雨続きだったけど、今日は晴れて良かったね!」

もう、梅雨ですか?!ってくらい今年のGWは雨が続いたけど、今日の空は、そんな過去の事など忘れてしまったかのようにケロッとしていた。

「最近の日本の天気はよく分からないね」

急にどか雨が降ったり、何日も日照りが続いたり。

「これも、地球温暖化のせいなのかな?」

『かもな』

凌平が、そう言いたげな表情で頷いた。

「きっと、地球も疲れてるんだよね」




「そーいえば、地球の誕生日っていつなんだろう?知らないなぁ。地球って今、何歳なんだろう?」

ふと疑問に思った。

もし地球が凄い高齢だったら、疲れだって出ちゃうよね。

『45億歳くらいらしい』

凌平がスマホで検索をしてくれた画面を私に見せてきた。

「45億?!すごいなぁ。」

けど、そっか。考えて見れば、地球って地球しかいないもんね。唯一無二の存在だ。だから、平均寿命で実年齢を比較するって言う概念がないのか...。

私は、はたと思いついた疑問がとてもしょうもない事だったと気付いた。

けど、凌平は隣で地球の寿命を一生懸命検索ワードに引っ掛けようとしている。

「ふふふ」

凌平、真面目だなぁ。

知らないって聞き流してくれて良いのに....。

私は少しおかしくなって笑ってしまった。

急に笑い出した私に、『何事?』と不思議そうに首を傾げる。

「ごめんごめん。なんだか面白くって...」

私達は他愛もない会話をしながらICカードを改札口にかざしていく。


プラットホームで電車を待っていると、凌平が少し呆れながら、笑いながら聞いてきた。

『今日はいつになく、元気だな...?』

「ん?だって、凌平と一緒に買い物に行くって久しぶりだもん。嬉しいに決まってるし!嬉しいと元気が出るじゃん?」

それに、今日は嬉しい事もう一つあるんだよ?

じゃじゃーん!!

私は今日、凌平にずっと言いたくてうずうずしていたスカートをふわりと見せた。

「ほら。これ、今日新しくおろしたワンピースなんだ!!淡い青色が綺麗でしょ!!」

私はおろしたての青色のフレアロングワンピースをひらひらと凌平に見せた。

Aラインですらっとエレガントなロングワンピース。フレアスカートだから風に舞うとひらひらする。ウエスト周りがリボンになっていてちょっとかわいい感じも忘れてない。すっごく一目惚れして買ったんだ。

「どう??かわいい?」

私は凌平の前で一周、くるりと舞って見せる。

『か、かわいい』

ぼそっと、呟く声が聞こえた。


「ぇへへ。ありがとう。」

ちょっと、私が無理やり言わしちゃった感じあるけど、それでも凌平の口からもらえた『かわいい』は最強に嬉しかった。

「凌平も格好良い〜」

半分照れ隠しで私も今日の凌平の服装を褒めた。

白のTシャツにダボっとしたカーデガンと黒のズボン。

清楚な男子高校生にまとまっている。

普段可愛い凌平が今日はちょっとだけ、大人っぽく見えた。



「むっ。お世辞じゃないもん。凌平、格好良くなってるよ??多分」

「昔はちょい農夫っぽかったけどね」



「け、けなしてはないよ?別に。大丈夫。今の凌平はいけてるから」

なんでか、私にひややかな視線を送ってきた。

「本当だもん!」


「そういえば、大丈夫?先週しんどそうにしてたけど元気になった?」

私は話を急いですり替える。

「風邪引いてたよね?」

すると、凌平が驚いたように目を丸くした。



「なんで分かった?って?分かるに決まってるよ」

「放課後、誰も居ない教室で鼻ズルズル言わせながら、机に突っ伏してたの見てたんだから」

「私に隠し事しようなんて100年早いよ!」

へへん!!私は止まらなくなった鼻の下を伸ばしきって胸を張る。

風邪、治った?

「元気になった?」

私が聞くと、コクリと頷く。


今日は顔色も良さそうだし、本当に元気そう。



「良かった。じゃ、今日は私達のお母さんに母の日のプレゼント探しにいこうね!」

私はそう言って、ホームに入ってきた電車に乗り込んだ。

■■■■■

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