28.――そして寝落ちする

 そうでなくても、住んでいる家に変なものがとか、居候の身で言っていい言葉じゃなかったよなあ。

 そういえば、元宮も怖い話は苦手だったっけ。話題になってるから! ってホラー映画とか見るんだけど、涙目になるくせに途中で止めようとはしないんだよね。


「……頬が緩んでいますよ? 私を怖がらせるのがそんなに楽しいですか?」

「いえいえ、違うんです! ちょっと元宮のことを思い出していて、それで! 失礼なことを言ってしまって、本当にすみませんでした!」


 ぺこり、と全力土下座スタイル。猫ではないけど、いわゆるごめん寝の体勢だ。


「元宮さんを……? でも、どうして急に?」

「急というか、癒四朗いやしろうくんに対するハルナさまを見ていて、似てるなあ、と思っていたんです。悲しい話に共感するところ、どうにかしてあげたいって、頑固なくらい一途なところ。そういうところ、尊敬できるなあ、好きだなあって、それから色々思い出していて」

「す、すきっ……!?」


 ひょわっ、と声が裏返るハルナさま。その反応を見て、えらいことを言ってしまったと俺もほっぺが熱くなる。


「元宮のことですよ!? いえ、ハルナさまのことも大好きですけどっ!」

「は、はい、ありがとうございます。でも……ふふ、そうだったんですね。一緒に眠った夜には聞けなかった元宮さんのお話、まだまだたくさんありそうですね?」

「勘弁してください……でも、元宮と言えばそうなんですよ。お顔ももちろんなんですが、ハルナさまと似ているところが多々ありまして。やっぱり無関係だとは……」


 と、話を切り出そうとしたところで。


 ぐららららっ! どんっ!


「わ、わふっ!? また地震っ!?」


 思わずちゃぶ台に潜り込み、ビビった声を出してしまう。揺れは一瞬だったけど……あーびっくりした……


「……おさまりましたよ。もう大丈夫ですから」


 ハルナさまに抱き上げられて、落ち着きなさいとぽんぽんぽん。うう……三十代男性のされることではないけど……やすらぐ……おちつく……


「お昼にも揺れていましたし、ここ何日か続いてますよね。もしかしてこの辺りは、地震の多い地域なんですか?」

「そういうわけではないのですが……うーん……」


 俺の背中を撫でながらも、思案顔のハルナさま。しばらくそうしていたあとで、よし、とちいさくつぶやいて。


「すこし気になることがあるので、マクロイさん――村長の家に行ってきます。暗くなるまで……は難しいかもしれませんが、そこまで遅くはなりませんから」

「それなら俺も連れて行ってください。よくしてもらって頂いているのに、ろくなお礼も言えていませんから。お話の邪魔はしないよう、すみっこで大人しくしていますので」

「それはかまいませんけれど……大丈夫ですか?」


 テキパキと準備をしたあと、俺を抱き上げたハルナさまが心配そうに言った言葉。その時はわからなかったけど、理由はすぐに理解できた。

 ほんの少しだけ距離がある、村長さんの家までの道。抱っこされたままの道中、ハルナさまの鼓動が、ちいさな揺れが心地よくて……


 そういえば……今日は神の座から何人呼んだんだっけ……あれって本当に眠くなる……ふにゃ……ご挨拶に行くんだし……寝ちゃダメだ……むにゃ……


「……やっぱり」


 ……すやあ……

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