25.ポメラニアン、面接をする
神様から直々に授けられたスキル『神の座よりの使者』。
同じく授けられし『統率者の器』。
このふたつを組み合わせることにより、俺は神の使いを呼び出し、仲間に加えることができるらしい。
ではその『神の使い』とは、そもそも何者なのかというと。
「どこかの世界、どこかの時間で偉業を為したものは、その死後も神とともにあることを許されるのです。世界を救った勇者たちの魂は、消えることなくこの世界を見守っている……そう考えれば通りが良いですかな」
大二郎さんを呼んで(このスキルを使うと眠たくなるので、たっぷりおひるねをして体力を満タンにしておいた)聞いてみたところ、そんな答えがもらえたのである。
「しかしですな。神の世界は平穏そのもの、かつての英雄・勇者と呼ばれし存在には、いささか刺激が足りぬところでもありまして。そういったものたちは、現世に干渉できる機会を虎視眈々と狙っております。リーダーの持つふたつのスキルを頼り、群れの仲間としてこの世に現れようとするものが、今後は続々と現れるでしょう。神から直々の指名を受けた、拙者は運がよかったですなあ! ワッフ!」
「いやいや、困るって! 自分はまだまだ子いぬだし、大群を率いるような器でもないし! 俺より立派なひとたちを、部下にできるはずがないでしょ!?」
動揺する俺をよそに、ワフフと笑う大二郎さん。ちゃんと考えておりますよと、大きく豪快な笑みを浮かべて。
「器は十分だと思いますが、体力の問題もありますからなあ。なので、あちらから接触があった場合、面接をすれば良いと思うのです」
「めんせつ」
「リーダーのもといた社会では、一般的な採用方法だったと認識しております。こちらの要望を伝え、あちらの希望を聞き、それが噛み合った場合にのみ、群れの仲間として加えればよいかと。もろもろの条件を踏まえるに、人数はあとふたり程度が適当でしょうな。向こうに戻ったらすぐ、拙者が触れ回っておきますよ!」
……と、そんなわけで。
ここ数日、学校が終わったあとの俺は、新規出店するスーパーの店長のごとく、たくさんの面接希望者への対応に追われているのである……!
犬の体にテーブルは、正直背筋がちょっとつらい。なのでちゃぶ台を用意してもらい、それを囲んで面接をすることになっている。スペシャルアドバイザーとして、経験豊富なハルナさまにも同席してもらいながらだ。
採用面接……もちろん受けたことがあるし、採用担当を押しつけられたこともあるけど……あるけどわわわふふふん(社畜時代を思い出し動揺)。
「ふふ、まさかこんな経験ができるなんて。長生きはしてみるものですねえ」
「その落ち着きを見習いたいです……相手はすごい人たちばかりで……どうしても気後れしてしまって……」
「堂々としていればいいんですよ。リーダーとしての自覚を持って、ね?」
「その自覚がないんですってば! ……あ、そろそろ来ると思います。よろしくお願いしますね」
出しておいたステータス画面が、ぴこんぴこん、と光るのが合図。そこに名前が表示されると、机を挟んだ向かい側にふわりと光が集まっていく。神の世界からやってきた、英雄さまの登場だ。
それは俺や大二郎さんと同じく、小型犬の姿を取るんだけれど……
…………
………………
……………………
「……はあ。すみません、疲れてしまいました……」
「ごめんなさい、私もです。今回はその……くせの強い人が多いです、ねえ……」
数人分の面接を終え、俺もハルナさまもぐったり。ふたりして机の上につっぷし、はああ、とため息をユニゾンさせる。
ひとりは昨日決まったので、残った採用枠はひとつ。こちらの求める条件としては、能力よりも話しやすくて落ち着いた人がいいんだけれど……
『あーし、世界の金銀財宝に興味があるからぁー。守ったげるから旅に出よ? それっぽいとこ、かたっぱしから荒らしてこ? それよりこの犬の体面白すぎでしょウケるわー!!!』
だったり。
『と、ととととにかく、食べられればそれでいいんだな。この世界の動物や魔物、どれもたくさん美味しそうなんだな』
だったり。
『王を守ることこそ騎士の本懐! この世界の王となるべく、覇道を進まれよ、
なんというかこう……個性的で……一本芯の通ったかたばかりでして……ぜんぜん人の話をですね……聞いてくれなくてですね……
「英雄とまで呼ばれた人たちなんですから、我が強くて当然なんでしょうね」
「大二郎さんも穏やかですけど、押しの強いところがありますもんね」
そもそも、勇者や英雄と呼ばれる人たちの手綱を握れというのが無茶なんですよ。ただの一般人なんだぞ、俺は。
「と、次が最後の人ですね。言っちゃダメなことなんでしょうけど、期待せずに流しましょうか」
「相手に失礼のないように、ですけどね。すみません、私も同じ気持ちです」
疲れた笑いを見せ合いながら、本日最後の相手を待つ。ぽわん、と明るく光ったあとで、向かいに座ったその人は。
「あ、あの……よろしくお願いします!」
少年のような声をした、まっしろふわふわの子いぬだった。
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