第8.5話 アレスの両親

「ソフィ、君はアレスの話を聞いてどう思う?」


 アレスは二人に挟まれ、あどけない顔をして寝息を立てていた。

 話を聞き終え、アークとソフィーはなかなか寝付けないでいた。

 寝られるはずもない、泣き叫ぶように訴える息子の言葉。いつの日か起こる衝撃、その後に待つ深い悲しみが広がっていた。


「どうと言われても、この子が私達の子供であることに変わりはない。大きなものを背負っているのなら手を差し伸べるだけよ」


「それはもちろんだけど……私は少し怖くなったよ」


「そうね、邪神なんてただのおとぎ話と思っていたわ」


 息子のやったことは真の英雄と讃えられるほどの出来事。

 しかし、その賞賛を送る頃には……


 アークを体を起こし、何度か首を横に振る。そんな事ならないと思いつつも、眠っているアレスの言葉。

 アレスの頬にそっと手を当てる。


「アレスは此処に居る。けどね、この子が元いた世界にはアレスはいない。それがたとえ、神のご加護だとしても、次は私達の番なのかって思い知らされた気分なんだ」


 邪神を自ら取り込み、アレスの犠牲によってその恐怖は取り除かれた。

 アレスにとって過去である現在は、邪神が居てそれに対抗できる存在。

 だから、アークは考えてしまう。

 どうすれば我が子を助けることができるのかと……


「そんなに弱気にならないで、あなたならきっと大丈夫よ。アレスだって、同じことを望んでいるとは思えないわ」


「そうだと良いね」


 何もかも受け入れようとするソフィの姿。

 根拠のない言葉。それでも、アークの心を少しだけ軽くしていた。

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