chapter2 お礼します

 「おかえり。じゃあ、早速始めようか。ここに座って」


 椅子に座る主人子。


 「まず最初にヘッドマッサージするよ」


 頭をマッサージする音。


 「んっ……凝ってるね頭。眠れてないの? このままだと将来ハゲそう」


 「頭のコリをとるだけで首とか肩のコリも改善される。自分でも定期的にやった方がいいよ」


 「めんどくさい? んっ……それじゃあ、私が毎日やってあげようか? そのかわり寝床とおいしいご飯を要求するけど」


 「えっ? お願いしたい? ふふっ……それじゃあ、本当に住み着いちゃおうかな」


 「君の髪の毛、さらさらして羨ましいなー。そこら辺の女の子よりも髪質いいんじゃない? 何かしてるの?」


 「シャンプーとトリートメントだけしかしてない? それでこれとかマジでいいなー。私なんか色々試して努力しても髪パサつくし」


 彼女の髪の毛を触る主人公。


 「ん? 全然そんなことないって? いやいや、君の髪の毛と比べたら全然だよ」


 「ってか、ちゃっかり髪の毛触っちゃって、セクハラだぞー」


 「ふふっ、冗談だよ。でも、ちょっとだけびっくりしたけど」


 「どう、気持ちいい? そう、良かった。今度はフェイスマッサージするから、ちょっと待ってて」


 椅子からたちあがる主人子。


 「よいしょっと、準備が整った。こっちに寝転んで」


 自分のふとももを叩く彼女。


 「何驚いてるの? え? 何してるって……膝枕だけど?」


 あたふたする主人公。


 「座ったままだとやりづらいし、これがやりやすいからさ。だから、遠慮しなくてもいいよ。おいで」


 恥ずかしながらゆっくりと膝枕される主人公。


 「ふふっ……いらっしゃい。それじゃあ、始めるよ」


 顔をマッサージされる音。


 「すりすりすりすり、意外と肌きれい。つんつんしたくなる」


 「つんつん。 ふふっ……人の顔で遊ぶなって、つんつんさせたくする君が悪い」


 「君、目の下クマがすごいね。目のあたりも優しくマッサージしていくね」


 「こめかみぐりぐりぐり……いた気持ちいいー。 ふふっ君の顔、面白い。これだけ痛そうにしてるってことは目が疲れてるんだね」


 「仕事でパソコンばかり見てる……? そっか、毎日お疲れ様だね。じゃあ、もっとぐりぐりしようっと!」


 痛がる主人公。タップアウトする音。


 「どう? ここ責められると痛いけど、頭すっきりするでしょ?」


 「ふふっ、ごめんやりすぎた。よくがんばりましたね。よしよし」


 頭を撫でられる主人公。


 「ふいぃーぐりぐりしてたら指が疲れちゃった。ちょっと休憩」


 じっと彼女を見つめる主人公。


 「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」


 「ただ、見つめていただけだって? ふふっおかしな人。ん? ちょっと動かないでね」


 顔をぐいっと近づける彼女。吐息がかかる音。


 「顎におひげが一本だけ伸びてる……。ふふっ後で剃ってあげるね」


 「顔赤くしてどうしたの? もしかして体調悪い?」


 髪を上げておでこをくっつける。

 

 「熱は……無いみたい。大丈夫だから離れてって、そういわれると離れたくなくなるなー」


 「分かっててやってるだろって? 何の事かなー? こーら、暴れると今度は別の所もくっつけちゃうかも?」


 「あっ……急にしゅんとなった。……この意気地なし」


 左耳に息を吹きかけて囁く。


 「私は別にそうなってもよかったけど? ……ふふっ顔真っ赤かだね。何を想像してたのかなー?」


 「今日は気分がいいからハンドマッサージもやったげる。じゃあ、手を出して」


 手をマッサージされる音。


 「私の手、冷たくない? 大丈夫? 良かった」

 

 「君の手、白くて綺麗。だけど、私よりも大きくてたくましいね」


 「私の手も綺麗? 毎日、日焼け止め塗ってるしなるべく手を酷使しないように、努力してるからね。私こう見えて綺麗になる努力はしてるつもりだよ」


 「ちょ、ちょっと! べたべた触りすぎだよ。そんなに気持ちよかった? 私の手」


 「褒めてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと手つきがいやらしくない? そんなことない? それじゃあ、マッサージしてるんだから、邪魔しちゃダメだよ?」


 「何で不満そうな顔してるのよ。手ならマッサージ終わったら好きなだけ触らせてあげるから、今はマッサージに集中してね。我慢できる?」


 「よし、良い子だね。じゃあ、引き続きやっていくよ」


 「手には万能ツボってのがあって、揉むと肩こりとか眼精疲労とか色々な所に効くといわれてるんだけど、正直本当に効くかどうか分からないのよね」


 「親指の付け根の膨らみ、母指球って言うんだけどここもマッサージするといいらしいから揉んでいくね」


 「ぎゅーっと。ああ、ここ痛気持ちよくてなんだか癖になるよね」


 「そういえば君の手相、生命線すごく短いね。もしかしてもう寿命が尽きるんじゃ……?」


 「ふふっごめん。適当にいっちゃった。手相しらないけど、君は長生きするんじゃない?」


 「まあ、手のしわで人生が分かると思ってないから私は信じてないんだけどね」


 「はーい。今度は全身マッサージするよ。うつ伏せになって」


 うつ伏せになる主人公。


 「よいしょっと、正座してたら足が痺れた。あ、うん。大丈夫。ちょっとだけ待ってね」


 「お待たせ。それじゃあお尻の上に乗るね」


 「よいっしょっと、重くない? まあ、重いっていったらまたこめかみぐりぐりしてやるけど」


 「むしろ軽くて乗ってることに気づかなかった? それはそれで嘘っぽくて信用ならないんだけど?」


 「ふふっ、君は嘘をつくのが下手だから分かりやすいなー。 本当のこと言ってるみたいだから許してあげる」


 「それじゃあ、始めるよ」


 首と肩をさする音。


 「揉む前に体温で温めて揉みやすくする。どう? 落ち着くでしょ?」


  「眠くなったらいつでも寝ていいよ。必要になったら起こすから」

 

 「それじゃ、揉んでいくね」


 首と肩を揉む音。


 「んっ……肩も首も凝ってる。相当お疲れみたいだね。常人なら死んでるレベル」


 「そんなにひどいのかって? うん。少なくともここまで凝ってるのは初めて。お仕事そんなに忙しいの?」


 「そっか、忙しいのか。じゃあ、今日はいっぱい癒してあげないとね」


 「次は背中いくよ」


 「やっぱり男の子の背中は大きいね。それにやっぱり凝ってる」


 背中を指圧する音。


 「んー硬ったいね君の背中。肩甲骨のあたりもコリすごいし、これは一苦労だわ」


 「寝る前にストレッチするだけでも、だいぶコリは改善されると思うよ。え? すぐ寝ちゃうからやらない? 言うと思った」


 「お礼はするからマッサージ毎日お願いしたいって? えー? どうしようかな? 私はそんなに安くないですぜ」


 「そうだなー? じゃあお休みの日にさ、行きたい所あるんだけど付き合ってもらえない? 実はそこ一人で行くにはすこし抵抗があって……」


 「スイーツのお店なんだけど、その……か、カップルが多くて入りづらくて……だから君にも来て欲しいんだ?」


 「それ、勘違いされないかって? わわ、私は別にスイーツが食べれれば、き、気にしないし……それに、勘違いされる相手が君なら嫌じゃ……ない……し?」


 「それってどういうことだ……って、その返しはずるいって! バカ!」


 分かっていない主人公。


 「君ってそういうとこあるよね。本当に良くないよ」


 頬を膨らませて拗ねた表情をする彼女。


 「明日、仕事休んででも付き合ってくれないとこめかみぐりぐりしてやるぞ!」


 怒って迫ってくる彼女。 


 「明日は休みだから行ってもいい? え? 本当にいいの? やったー!」


 「冗談のつもりでいったのに……言ってみるもんだね!」


 「よし! じゃあ気合い入れてマッサージ頑張っちゃうよ!」


 「マッサージ上手くて寝ちゃいそう? ふふっ、ありがと。小さい時からお父さんのことマッサージしてたりしたから、マッサージの腕には自信はあるんだよねー」


 「でも、君お父さんよりコリが酷くて揉むの結構一苦労だけどね」


 「こんなもんでいいかな? それじゃあ、今度ふくらはぎいきますねー」


 「うわー足もパンパン、君どれだけ体を酷使してんのよ」


 痛がる主人公。


 「家が職場から遠くてずっと座りっぱなしだからしょうがない? はあ……こういうこと簡単にいうことじゃないけど、転職した方がいいんじゃない?」


 「実は考えている……か。まあ、今は色々な稼ぎ方があるしね。君案外ユーチューバーむいてるんじゃない?」


 「そうかな? 私は君がユーチューバーしてるところみてみたいけど?」


 「本当に職に困ったらやってあげてもいい……そっか、じゃあ楽しみにしてその時を楽しみにしてるよ」


 「足の裏もやっていくよ」


 「そんじゃあ、痛いかもだけど我慢してね」


 悶絶する主人公。


 「ははは! どんだけ痛がってんのよ。たしか足つぼって手と同じで色んな所につながってるんだよね」


 「こんだけ痛いってことは臓器が弱いのかな? 足つぼ詳しくないけど、大体ここら辺って肝臓とか膵臓とかじゃない?」


 「ここまで痛がる君、面白いね! じゃあ、もっとやっちゃお!」


 痛すぎて逃げ出そうとする主人公。


 「おい、逃げようとしてもダメだよ。もう少し我慢してねー」


 「よーし、とりあえずこんなもんでいいでしょ? あまり揉みすぎても痛めちゃうし、また辛くなったら私がやってあげるから」


 「何か名残惜しそうな顔してるね君。そんなに気持ちよかった? ふふっ、まだ癒しの時間は続くから安心してよ」


 「今度は耳かきしてあげるけど、その前に……えいっ!」


 うつ伏せの主人公に抱き着く彼女。


 「へへ……温かいでしょ? 人肌の温度は人間が一番落ち着く温かさらしいから抱き着いちゃった。どう? 落ち着く?」


 「心臓バクバクしてるー。まあ、私もなんだけどね」


 「付き合ってもいないのにこんなことしてるのなんだかイケナイことしてるみたいだねー?」


 「へへー? このまま付き合っちゃう私たち?」


 今すぐ逃げ出したい気分とこのままの状態が続いて欲しいと願う気分が拮抗してお互い顔もみれないくらい赤くなっている二人。


 「い、いやー何だか熱くなってきちゃった! ちょっとお水飲んでくるね!」


 冷蔵庫から取り出し勢いよく喉をならして水を飲む音。


 「ふぃー……それじゃあ、耳かきやろっか。また、私の膝においで」


 「耳かきやる前に少し耳をマッサージするね」


 耳をさする音。


 「どう? 意外と耳をマッサージされるの気持ちいいでしょ?」


 「血の巡りが良くなってきて温かくなってきたね」


 「よし、こんなものでいいでしょう。じゃあ、この綿棒を使って右耳からいくよ」


 耳かきする音。


 「どう? 痛くない? ……気持ちいい? 良かった。私、初めてやるから痛かったら言ってね?」


 「かきかき……君、耳の中綺麗だね。掃除はすぐ終わりそうだけど、耳の中のマッサージを兼ねてまだまだやっていくよ」


 「そういえば……さ。私って人生で耳かきされたことないかも。……親にやってもらったことないのかって? 私、父子家庭だからお母さんいないし、一通りのことはほぼ一人でやってきたからさ。お父さんは不器用だからこんなことやらせるとあぶなっかしいし」


 「耳かきって他人にやってもらうとそんなに気持ちいいんだ? へー……あ、それじゃあ、明日は君が私にやってよ!」


 「下手だからダメ? 別にそれでもいいよ。ただ、耳の中をこしょこしょするだけでもいいしさ。それでもダメ……?」


 「いいの!? やった! じゃあ、明日絶対やってね」


 耳の中に息を吹きかける音。


 「めちゃくちゃビクンって体震えた。ふふっ可愛い」


 「じゃあ、左耳やるよー。ごろんしてね」


 寝返りを打つ音。


 「顔こっちに向いたね。ちょ、ちょっとあまり顔直視しないでよ……。恥ずかしいよ。そ、それじゃあ始めますよ」


 耳かきをする音。


 「うん? 太ももすべすべして気持ちいい? 急にどうしたの?」


 「ひゃん?! ちょっとバカ! どこ触ってるの!? 手つきがいやらしんだけど!?」


 「当店はエッチなサービスはしてませんので。次やったら足つぼやるからね?」


 「……もう。私にも心の準備があるんだから! そういうことするんだったら……ムードを大事にしてもらいたいなっ!」


 「……あれ? もしかして寝てる?」


 静かに寝息を立てる主人公。


 「はあー……本当に君って人は……無駄にドキドキして何だか損したんだけど?」


 「すごく気持ちよさそうな顔して寝てるよ。この!このっ!」


 頬を引っ張る彼女。


 「あ、起きたな。何してるって? 別にー? 何でもないですよーだ」


 頬を抓られる主人公。


 「よし。こっちもこんなものでいいか。それじゃあ、仕上げいくよー」


 耳の中に息を吹きかける音。


 「お疲れ様。少しは疲れ取れた?」


 あくびをしながら頷く主人公。


 「なんだか眠そうだね。そろそろ私も寝ようかな」


 「ベッド使っていいの? それじゃあ、君はどこで寝ようとしてるの?」


 「ソファで寝るって、せっかく疲れを取ったのにまた溜まっちゃうよ。私がソファで寝る」


 「そういうわけにはいかない? いいよ。贅沢言える身分じゃないし、私は地べたでもどこでも寝れるからさ」


 「むっ……君も頑固だね? 譲る気はないか。それじゃあ、じゃんけんして勝った方の意見を飲むってことにすれば、お互い納得でしょ?」


 頷く主人公。


 「よし! それじゃあ、いくよ! 最初はグー、じゃんけんポン!」


 「よし! 私の勝ち。それじゃあ、私の言う事は絶対だね」


 「じゃあ、今日は私とベッドで一緒に寝る! 拒否は許しません」


 「何でそういう結論に至ったって? だってそれがお互い疲れないで寝れる最善策だと思うけど?」


 首を横にふる主人公。


 「いいじゃん! ベッド無駄にでかいんだし、ほら寝るよ!」


 袖を引っ張られてベッドに引きずり込まれる主人公。


 「ふいぃ……君のベッドふかふかだねー。気を抜いたらすぐ寝ちゃいそう」


 「ねえ、君。そんな端にいたら落ちちゃうよ?」


 「恥ずかしがらないでこっちおいで。ほーら、捕まえたぞ」


 「へへ、温かいね君。くっつく必要ないだろって、いやーそれがあるんだよな」


 「私、いつも抱き枕に抱き着いて寝てるから君にくっつかないと寝れなくてさ。だから私は君にくっつかないといけないわけです」


 「色々当たってるからやめてくれ? そりゃ、抱き着いているわけだから当たるのは仕方ないよね? それに私は気にしないし」


 「それとも君も男の子だから変な気持ちになっちゃうとか?」


 「ふーん。ま、仮にそういう間違いがあっても、私は……いいけど?」


 目線を逸らして恥ずかしながら寝返りをうつ主人公。 


 「あ……また逃げた。本当に意気地なしなんだから……」


 背中に抱き着いて耳に息を吹きかける彼女。


 「バカ、ヘタレ、ムッツリスケベ……でも、そういう所がスキ」


 耳に不意打ちキス。


 「おやすみ。私はいつまでも待ってるから、早く答えを聞かせてね?」


 「んっ……まだ夜中か」


 「君は……まだ寝てるみたいだね」


 「寝顔可愛い。つんつん、起きないね。今なら大胆なことしても起きないかな?」


 「よいっしょっと、へへ……こうすれば君の顔をずっと見れるね」


 「本当に安らかな顔してるなぁ。……これだけ熟睡してたらキスしてもバレないよね?」


 「じゃあ、君の唇いただきます」


 「んっー……ちゅっ。し、しちゃったー……キスってこんな感じなんだぁ……ちょっと癖になりそう」


 「こんなときでも君は呑気に寝てるし、私がこんなにドキドキしてるのに何だか拍子抜けしちゃうな」


 「もう一回しても……バレないよね?」


 「じゃあ、もう少しだけ今度は長くやってみようかな」


 「んっ……んんっ……はあぁ……好きっ大好きっ……。はあ、はあ……キスするたびに好きって気持ちが爆発しそうになる」


 「君にもっと触れたい、一緒にいたい、もう何をしても君を私の物にしたい……君なら私の勝手、許してくれるよね?」


 「私がこんなことしてるのに寝てる君が悪いんだよ? 今から襲っちゃうから」


 「……え? 君、起きてたの? いつから……?」


 「割と最初から? ー---ッ!?!? ば、バカ! 本当にバカ!」


 「本当に知らない! バーカ! ヘンタイ!」


 枕を思いっきり投げつけて主人公をベッドから追い出す彼女。

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