恋人前夜~君の事が大好きな彼女との甘い一夜
是宮ナト
chapter1 拾ってください
夜、住宅街を歩く足音。道の真ん中で立ち止まっている女性を見て立ち止まる。
「…………あ、ちょうどいいところに」
立ち去ろうとする主人公。
「ああ! ちょっと待ってよ! 無視しないでよ!?」
しがみつかれる主人公。
「何の用だって? じ、実は……鍵を失くしてはいれなくて……泊めて欲しいなーっと思って」
再び立ち去ろうとする主人公。
「何でまた無視しようとするのよ?! どこかに泊まればいいだろ?って、それもできないんです~! 今日に限って財布も家の中なんです~!」
「くんくん、くんくん このレジ袋からいい匂いが漂ってますねえ」
「…………じー」
レジ袋を見つめてくる彼女をみて後ずさる。
ぐううううぅぅぅ!彼女のお腹の音が鳴り響く。
「…………お腹空いた」
「何か恵んで欲しい……な?」
「私このままだと朝まで路上生活するはめになっちゃうし、今日、夜中雨が降るみたいだから君が泊めてくれないと私びしょ濡れで風邪引いちゃう」
「だ・か・ら! 泊めてくれるよね?」
詰め寄る彼女に圧されて首を縦にふった。
「やったー! 早速いこ!」
住宅街を駆ける足音。
家の扉を開ける音。
「おじゃまします」
靴を脱ぎ綺麗に並べる音。
雨が降り始めた音。
「ふぃーちょうど雨降ってきたね。君のおかげで濡れずに済んだよ」
歩く音。ソファに座り重みで軋む音。
「君、いいソファ持ってるね。私なんか地べたで座布団だし」
「実家から持ってきたんだ? へえー私、何も家具持ってきてないから、殺風景なのよね」
「今度、見てみたい? ダメダメ! 人様に見せられない部屋だし、君の家に比べれば狭いから絶対ダメ!」
「まあ、どうしてもって言うなら一秒だけみてもいいよ?」
「ほとんど見れないって……見せたくないから言ってるの! ほら、さっさと食べ物よこしな!」
レジ袋から弁当を取り出し彼女に差し出す。
「へ? いいの? これもらっちゃって? 一つしか買ってないんでしょ?」
「昨日の余り物を食べるからいい……? それ、私の役目な感じがするけど……じゃあ、遠慮なく貰う。ありがと」
電子レンジの作動音。取り出して弁当を取り出し食べ始めた。
「それじゃあ、いただきます」
食事シーンは無し。
「ごちそうさまでした。さてと、悪いけど洗濯機とシャワー借りてもいいかな? うん、ありがと。じゃあ、お先に入ってくるね? 覗いちゃ駄目だからね?」
「はあー……すっきりした」
「シャワーありがと。洗濯機も貸してくれて感謝感激ですよ」
団扇を扇ぐ音。
「涼しい~君の家はクーラーついてるんだね。私の部屋なんて安アパートだから扇風機に団扇ですよ。おかげで寝つきが悪くて寝不足だよ」
「今の時期は暑くて嫌になるよね。暑がりだからすぐ汗かいちゃうし、寝づらいしで夏ってほんと嫌な季節だな」
「へえー君は夏好きなんだ? 何で?」
「夏祭りに海にバーベキューがあるから? ふふっ、君って意外と子供っぽいところあるんだね」
「何ばつが悪そうな顔してんのよ? 可愛いなこの。 え? 私が好きな季節?」
「やっぱり秋かな。春は花粉症に悩まされるし、冬は寒くてなかなか起きれないし、それに比べたら秋はいいよね~。気温は丁度いいし」
「紅葉も綺麗だよねー。食欲の秋だから食べ物もすごく美味しくて、ついつい食べちゃうし」
「ん? 何その目? 私の理由も大概だって? ……ふふっ、本当だ。思いっきりブーメラン発言じゃん」
「季節の話をしてたらアイス食べたくなってきた。でも、外出るのはだるいしなー、ちらっ、買ってきてくれてもいいんだよ?」
「ちゃんとお礼はするからさ! そうだなーちょっとだけなら触っていいよ?」
服をばたつかせて胸ちらさせる彼女。
生唾を飲み込む音。
「ちょうど食べたかったから買ってくるって? やったー! さすが君だね!」
「じゃあお礼に触っていいよ? 別にいい? 遠慮しなくていいよ。はいどうぞ」
手を差し出す彼女。
「何してるって? ほら、触っていいよ」
「どうしたの? んー? 顔赤くしてどこ触れるとおもったのかなー?」
逃げるようにアイスを買いに行く主人公。
「ふふっ、気をつけてねー」
「あーおかえり。アイスありがと」
冷蔵庫にアイスをしまう音。
「ちょっと待ってね。洗い終わった下着干してるからさ」
「お待たせー。君の服、大きくて助かったよ。下着履いてないからぶかぶかで全身隠れるし」
「何のアイス買ってきたの? バニラのカップアイスとチョコバーか。じゃあ、私はカップアイスの方貰おうかな」
「私、後で食べるから冷蔵庫にしまっておいていいよ」
「それにしても君、意外と可愛いTシャツ持ってるんだね。私が今着てる猫のイラストがプリントされたの私めっちゃ欲しいんだけど」
「え? いいの? 貰っちゃって?」
「全然着てないやつだから大丈夫? 別に私、そういうのは気にしないよ」
「そっか、ありがと! 大切にする!」
Tシャツをひらひらさせながら主人公に見せつける彼女。
「どう? Tシャツ一枚で後は何も履いてないよ。ドキドキする?」
ズボンを手渡す主人公。
「さっさとジャージ履けって、えー私暑がりだから履きたくないなー」
「いいじゃん。男の子ってこういうの好きなんでしょ? お礼の一つとして今日はこの衣装のままでいてあげるよ」
ため息を吐く主人公。
「ちなみに言っとくけど私の洗った下着、見ちゃだめだよ?」
「まあ、でも色くらいなら教えてもいいよ」
「興味ないフリして実は興味深々なんじゃないの?」
「あー寝たふりしても無駄だぞ。ちゃんと答えろ」
悪戯な笑みを浮かべて主人公に近づき、肩を寄せる。
「私、今かつてないほど無防備な姿だよ。ねえ、ドキドキするでしょ?」
「もう、素直じゃないんだから、もう少し素直だったら見せてあげたのに」
「何を見せるって? それはもちろん……私の部屋だけど?」
「そんなに食いついて何を見せると思ったのかなー? ふふっ君も男の子だね」
「顔赤くしてかわいーなおい。ほっぺた熱いぞ」
「ごめんごめん、からかいすぎた。だから拗ねないでよー」
主人公の肩を抱き寄せる。
「ねえ、今日はありがと」
「大した事はしてないって、相変わらず優しいね。君は」
耳元まで顔を近づけ、吐息がかかる。
「ねえ、疲れるみたいだし、マッサージしてあげようか? 今日のお礼したいしどう……かな?」
耳元で囁かれドキドキしている主人子はきょどりながら頷いた。
「分かった。 先にシャワー浴びてきて。 うん、いってらっしゃい」
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