細やかな

 夕食を食べ終え流しに食器を置く。

 「俺、先にお風呂入るね。」と駿也は私に告げる。

 「じゃあ、私食器洗うね。」と私は駿也に言う。

 「ほんと助かる。じゃ、お風呂入ってくるね。」と駿也は笑った。

 「はーい。」と私は駿也に言った。

 そして駿也が居なくなり私一人になった。

 駿也に告げた通り私は食器を洗うことにした。早速水を出すと、冷たい水が出て驚いた。急いでお湯が出てくるようにして数秒待った。お湯が出たのを確認してから食器を洗った。二人分の食器である為、そこまで苦労はしなかった。

 想像以上に早く終わった為、私は暇を持て余すことになった。取り敢えず携帯を見ようと思ったが携帯が見当たらなかった。そして私は捜索活動をすることにした。

 まず鞄の中、奥の方まで手を入れるも携帯は姿を見せなかった。ということは私は何処かで携帯を落としたか、或いはそもそも携帯を持ち歩いていなかったか。という結論に至ったが、探すのが面倒になった。

 私は駿也の携帯を持ち、お風呂場に向かった。ドアの向こうでは水が波打つ音がする。

 「駿也。私の携帯探したいから駿也の携帯使っていい?」と訊ねたところ。

 「いいよ〜」と間延びした返事で承諾した。

 「ありがと。」と私は言い残し、駿也の携帯で電話を掛けることにした。

 携帯の電源を入れる。そこには見覚えのない植物の写真が映っていた。これはなんだろうと疑問に思ったが答えは直ぐに出た。この植物は『フタバアオイ』だ。実は駿也は京都から来た人で地元にこのフタバアオイが沢山生えている。と聞いたことがある。私が初めて駿也の家に行った時、小さな鉢に植えられたフタバアオイを見つけたことがある。

 そんなことを思いながら電話帳を開き、自分に電話を掛ける。通話ボタンを押しながら辺りを見渡す。すると自分のお尻の方から振動とゔーーという鈍い音がする。そこで携帯が尻ポケットにあることがわかり、お手本のような燈台下暗しがあるのかと思った。

 駿也の携帯を炬燵の上に置き、自分の携帯をいじることにした。

 でも、何をしよう、SNSを使わない私にとっては携帯とはただのコミニュケーションツールでしかない。

 そこでフタバアオイの花言葉を調べることにした。

 【フタバアオイ はn】と入れた時点で変換には【フタバアオイ 花言葉】と人間味の無い文字が出てきた。私はそれをタップした。

 そこには検索した通りフタバアオイの花言葉が書いてあった。

 私はそれを読む

 『フタバアオイの花言葉とは【細やかな』と読んだところで「あったまったよー」と言う駿也の声がした。

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