新しい子
小夏の腕には水風船のようにぷくぷくした赤子がいる。彼女の妹だ。
僕は小夏を見た。とても幸せそうな顔をしている。僕は微笑んだ。
「どうしたの、
「どうしたのって、どうしたの?」と僕は聞き返す。
「どうしたのは、っていうのは、えーっと。」と小夏が考える。
その顔もどこか幸せそうだ。
「なんでもないよ。」と僕は小夏に言う。
「そう、」と小夏は言い、赤子の方を向く。
「こーたろーくん、何笑ってるの?」と言いながら肇君がダイビングの方から走ってきた。
「そんな笑ってる?」と僕は聞き返すと「なんか、ニヤニヤしてる。」と肇君は言った。
「そう?ニヤニヤしてると言うより微笑んでるじゃない?」と小夏が口にする。「まぁ、そうかもしれない。」と肇君は不貞腐れる。
それを見て少し笑ってしまった。隣では小夏も笑ってる。それにより肇君は更に不貞腐れた。
そして肇君は「そんな、こと言ったら、お姉ちゃんとこーたろーくん、この子お父さんとお母さんみたいだもん。」と反撃をしたかっただろうが、特に痛くも痒くもなかった。寧ろ笑った。
肇君はより一層不貞腐れた。
「お父さんとお母さんみたいだって。」と小夏は嬉しそうに言う。
「みたいだね。」と僕は返す。
「ところでこの子の名前って何?」と僕は素朴な疑問を訊く。
「なんだと思う?」と小夏は逆に僕に対して問題を出すように言った。。
どこか懐かしい、そうだ、母はいつもこのような問題の出し方をしていた。そう思うと僕は涙が出てきた。
「大丈夫?私変なこと言った?というかこの家に居て大丈夫?なんか気分悪くなったりしない?」と小夏は僕のことを心配する。
「大丈夫だよ。だって、この家は僕の家族の思い出が詰まってるから。」と僕は素直に言う。
「そっか、それはいいことだ。」と小夏は微笑む。
「それで、この子の名前は、、」「あ、忘れてた。」「小夏っておっちょこちょいなとこあるよね。」「え、それは初めて言われた。」「あ、そうなんだ。それよりも、名前を!」「あ、そうだ。えーっと、この子の名前は。」
僕は自分の鼓動が聞こえるのがわかった。
「
「瑞樹か〜。いい名前だね。」と僕が言うと「僕が名前つけたもん。」と肇君が主張した。それに二人で笑った。
僕はもう一度赤子の方を見た。笑っている。その顔は笑顔で満ちている。
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